必然性のあるデザインで、普遍的な美しさを表現する。
〜モノづくりに込めた想いとその責任〜

マツダデザインが向かうべき次なるステージ。それは、人とクルマをより親密にする情緒的価値の追求。
そんな多彩な感情を呼び起こす美しい表現を、カラーデザイナーは色や素材を通してクルマの細部にまで施していく。
カラーデザイナー 星正広、そして保坂美有。二人の真摯なモノづくりが、クルマに新たな美意識を吹き込む。


マツダデザインが求める、
“心揺さぶる美しさ”の本質を自問する。

マツダデザインが求める、“心揺さぶる美しさ”の本質を自問する。

魂動という哲学のもとに、マツダデザインが追い続けるもの。それは“心揺さぶる美しさ”。ひと目で心を奪われるような美しさを、クルマというプロダクトで表現したい。そう、クルマは単なる道具ではなく、乗るほどに愛着が深まる美しい存在であるべきだ。なぜなら、その美しさは人々の生活や感性を豊かにするものだから。そんな想いをもって、マツダのデザイナーたちはクルマづくりに取り組んでいる。

マツダデザインが求める、“心揺さぶる美しさ”の本質を自問する。

「魂動の“心揺さぶる美しさ”とは何かをよく考えます。モノを見て美しいと感じる。その印象がその場ですっと消えるのではなく、ずっと記憶に残り続ける。そこまでの表現かどうかが重要だと感じています。例えば自然の景色でも、ただきれいなだけでなく、そこに心に残る印象的な要素があれば、記憶として脳細胞にまで刻み込まれます。クルマのデザインも、そこまでの美しさを実現できているかは常に意識しますね」(星)。

「私は、それがなぜ美しいと感じるのか、その根拠にちゃんと向き合うことが大事だと思っています。表面的な美しさの奥にある、美しさの本質やそこに込められた想いなどをしっかり見極めること。美しいものは偶然ではなく、必然から生まれたと思うのです。デザインの必然性は、いつも第一に考えています」(保坂)。

マツダデザインが求める、“心揺さぶる美しさ”の本質を自問する。

カラーデザインの役割。
それは、造形の美しさに心を動かす“感情”を与えること。

カラーデザインの役割。それは、造形の美しさに心を動かす“感情”を与えること。

カラーデザインの役割。それは、造形の美しさに心を動かす“感情”を与えること。

このような“心揺さぶる美しさ”に対する考え方を、カラーデザイナーはどうやってクルマで表現しているのだろうか。

「カラーデザイナーは、ボディやインテリアで使われる色や素材を開発するのが主な仕事です。カタチを創る造形デザイナーと一緒に議論しながら、この部品はどうあるべきかを考えて、色や質感を与えていくのです。造形デザイナーとカラーデザイナーは分業ではありますが、ほぼ一体となってチームで動いているのが実態ですね」(星)。

では、造形デザイナーと一緒にデザインを進める際に、カラーデザインに求められる役割とは何か。それは、“造形の美しさに心を動かす感情を与えること”だと考えているという。

「造形デザイナーは、クルマのボディだったり、インテリアならインストルメントパネル、ステアリングやシフトノブ、シートなどの美しいカタチを創ります。

私たちカラーデザイナーは、そこに“感情”を与えていく。形と色や素材を一体で創ることで、心を高ぶらせたり、安らぎを感じたり、凛とした気持ちにしたり、そういう感情をプラスしていくのが、カラーデザインの役割だと考えています。

一見、色や素材を決めているだけのように思えるかもしれませんが、むしろその色や素材によってどんな感情を抱いてもらうかを考えることが、カラーデザインの本質なんだと思います」(保坂)。

カラーデザインの役割。それは、造形の美しさに心を動かす“感情”を与えること。

クルマをもっと人の気持ちに寄り添う存在にするために。
表現したかったテーマは、“うつろいや繊細さ”。

クルマをもっと人の気持ちに寄り添う存在にするために。表現したかったテーマは、“うつろいや繊細さ”。

カタチに対して見る人の感情に訴えかけるような情緒的な要素を見出すこと。それがカラーデザイナーの重要な役割だと語る二人。そしてこの“情緒的価値”は、マツダデザインが追求する新たな美意識にもつながっている。

クルマをもっと人の気持ちに寄り添う存在にするために。表現したかったテーマは、“うつろいや繊細さ”。

「これまでのマツダのデザインは、スピード感や力強さ、凝縮感といった部分にフォーカスし、生命がもつ躍動的な美しさというものをずっと追求してきました。その価値をより普遍的なものとして継続させるために、私たちマツダデザインは、この“情緒的価値”を描き出すことに意識を向けつつあります」(星)。

魂動の世界観を継承しつつ、どのような情緒的価値を加えていけば、カラーデザインとして新たな表現に向かうことができるか。たどりついたのは、これまでにない“うつろいや繊細さ”という要素を取り入れることだった。

「人間の繊細な感性を反映したデザインを施すことで、より人間の感情に訴えかける存在にクルマはなれるのではと考えたんです。曖昧で、不完全で、抑制された部分があるからこそ、親しみを感じる。人間も一緒ですよね。強い面もあれば、弱い面もある。そんな日本人独特の生命観を宿したような美しさを、“うつろいや繊細さ”といった要素で表現してみようと思ったのです」(保坂)。

クルマをもっと人の気持ちに寄り添う存在にするために。表現したかったテーマは、“うつろいや繊細さ”。

乗る人に落ち着きや安らぎを与える、
時間の積み重なりが生み出す“空間の美的感覚”。

乗る人に落ち着きや安らぎを与える、時間の積み重なりが生み出す“空間の美的感覚”。

“うつろいや繊細さ”を取り入れたインテリア空間を創る。二人はカラーデザイナーだからこそできる感情に訴えかける色や質感を実現させるため、4つの表現テーマに取り組んだ。

乗る人に落ち着きや安らぎを与える、時間の積み重なりが生み出す“空間の美的感覚”。

「まず考えたのは、“空間の美的感覚”というテーマです。部屋や建物に入った時の独特の雰囲気。特に日本人が落ち着きや安らぎを感じるのはどんな空間か、いろいろ議論しました。そうして出てきたのが、日本の伝統的な木造建築です」(星)。

「木という素材がもつ温かみ、経年によって深みを増していく色味など、木は昔から日本人の暮らしのそばにあった素材です。そんな温かみや深みを想起させる新しい内装色を創ることが、落ち着きや安らぎを感じさせることにつながると考えました。そうして生まれたのが、“オリエンタルブラウン”です。重たさを感じさせず、落ち着きがありながら若々しさも感じられる。そんな日本的な新しいブラウンができたと思います」(保坂)。

「オリエンタルブラウンに関しては、色のコンセプトを練り上げるのに多くの時間を割きました。チーム内で2、3カ月は議論したでしょうか。そうして内装色を決める会議に、コンセプトを具現化した色として、このオリエンタルブラウン1色だけを提案しました。通常は複数の候補を挙げて絞り込むのが普通なので、このやり方はひとつの挑戦でした。でも、今回の内装色に対する考え方を積み上げていくと、この色しかないという結論になったのです。そして、その色は一発で承認されたのです」(星)。

最終的な色だけでなく、そこに至る思考のプロセスも重視すること。そしてたとえ1案でも、その方向性に間違いがなければ、迷いなくゴーサインが出せること。そんなチーム全体の意識の統一が進んでいることも、マツダデザインが進化している証しかもしれない。

乗る人に落ち着きや安らぎを与える、時間の積み重なりが生み出す“空間の美的感覚”。

乗る人に落ち着きや安らぎを与える、時間の積み重なりが生み出す“空間の美的感覚”。

さらに、木そのものの風合いを空間に取り入れるため、本杢の“栓(せん)”という素材をインテリアに採用している。

「栓は日本全土に分布する木で、古来から和太鼓の材料などに使われてきました。木目が力強く、凛とした表情が美しい木材です。色味もオリエンタルブラウンと同調させ、時の流れを経て深みを増したような印象に仕上げました」(保坂)。