理想を追求したら’人間’にたどり着く

車両開発本部 副本部長
松本 浩幸
(2016年3月18日時点の役職)

理想のクルマのあるべき姿を追い求めて、マツダの開発者がたどりついた答えが、徹底的な人間特性の研究でした。その成果から生まれたのが、まるで自分の体の一部のように動かせる、ドライバーの意思とクルマの動きの一体感。そこにある安全・安心な走りこそ、マツダの目指す“人馬一体”です。どんなドライバーにも、運転する楽しみとマツダのDNAを感じさせるクルマ作りとは? 車両開発本部 副本部長の松本浩幸(役職は2016年3月18日時点)が語ります。

理想のクルマとは何か?

クルマづくりに携わるエンジニアなら誰もが考える、この使命。しかし、実際の開発現場では、マーケティング、他社との技術競争に追われ、「本当に創りたいクルマ」にたどり着くことは決して簡単ではありません。

私たちマツダのクルマづくりは、どのようにして理想を目指しているのか?
車両開発本部 副本部長である松本浩幸のインタビューを通じ、3回に渡ってマツダのものづくりの思想をお伝えします。

その1回目。テーマは、「人間中心のクルマづくり」。
最近、モーターショーやイベントなどの開発者のコメントはもちろん、販売会社の現場でも「マツダは人間中心にクルマをつくっていますから」といった言葉を耳にします。果たして、この人間中心とはどういうことなのでしょうか?

クルマづくりの目標設定を変える。

スカイアクティブの技術開発を始めたころから、開発の考え方を変えていきました。簡単に言うと、目標設定のやり方を根本的に変えたんです。従来は、他銘柄を評価して、自分たちのクルマとの差をみて、それを超える性能を持とうというようなやり方でした。それでは、いたちごっこというか、いつまでたっても一番になれません。

クルマづくりの目標設定を変える。

『今までの方法ではダメだろう』ということで、理想的なクルマとは何かを考えてそれを目標にするようになりました。もしくは、理論的にもうこれ以上は絶対に行けないという限界があるのですが、性能を理論限界まで高めれば、他社がどんなに開発をやってもそれ以上は行けないので、常に目標がブレない。そういう目標設定をすることによって、社員が全員、同じ方向に向かって進めるようになりました。2009年か2010年くらいのことですね。

理想を追求したら、’人間’にたどり着いた。

『では、理想って何だ?』ということになります。それはもう、社内で喧々ゴウゴウの議論をしました。結局のところ、クルマは走行条件が変わらないテストコースやサーキットをいつも走っているわけではないんですね。一般に、路上には対向車も歩行者もいるし、道路状況もどんどん変わります。さらに、天候も晴れだけではなく雨や雪が降ったりします。そんな外乱の中でドライバーは、適切に対応しなければならない。そういう状況下に置かれたドライバーが適切に対応できるクルマって何だろうかというのを、みんなで考え始めたんですよ。それが本当に“理想のクルマ”じゃないかと。

その“理想のクルマ”を考えた時に、『そもそも運転する人間って何だろう。それをまず知らなきゃいけないよね』という話になりました。意外と人間、自分自身のことをあまり考えたことはないものですよね。ところが、いざ、人間って何だろうって考えると非常に難しくて。だから人間を徹底的に研究して、人間の特性や五感で感じたものをどう判断して、どう操作に生かされていくのかをずっと地道に研究して…。そうやって開発してきたのがCX-5以降の新世代商品なんです。

理想を追求したら、’人間’にたどり着いた。

人間は、最高のコンピューター

人間って、最高のコンピューターだと思います。私見ですが、どんなにコンピューターが発達しても人間を超えることは難しいと思っているんです。その最高のコンピューターを120%生かし切るようなクルマ、人間を中心に考えられたクルマというのが、普遍的なクルマの価値なのではないかと。例えば、ジェットコースターは楽しいですよね。でもそれは、恐怖とか驚きによる楽しさだと思います。クルマはそれとは違います。私はクルマの楽しさとは、扱いやすくて自分の手や足のような感覚で安心感を持って、自分の思い通りに動かせるような楽しさだと思っています。過激な動きをするだとか、非常に扱うのが難しいとか、そういうクルマではなく、常に扱いやすい。どんな人でも、どんな道路環境の変化にも落ち着いて意のままに操れるような、そういうクルマが普遍的に私にとってのいいクルマだと思います。

クルマのデータだけに向き合うのではなく、運転する人間と向き合い、その特性を徹底的に解明する。そして、人間にとって最も扱いやすいクルマこそが絶対的な理想のクルマになり得る。そう信じてマツダのエンジニアたちは理想を追求しているのです。

それでは、その扱いやすさは、どのような価値を生むのか、次はマツダが志向する「人馬一体」とは何か?について明らかにしていきます。


  

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