ロードスター RF 開発物語 Vol.3 2/2

「リトラクタブルハードトップ」の美しい動きを追究して

ルーフシステム設計者
松本 浩一

“だれもが、しあわせになる”。初代から大切に育み続けてきたロードスターの魂を受け継ぎ、ロードスター RFは開発されました。
意のままにクルマを走らせる歓びをあらゆる人に感じてもらいたいと願い、完成させたロードスター RFの開発の物語をご紹介します。

設計という技にできること、とは何か
その奥義に皆で挑戦した共創の力

「これならばできる、と全員で確かめあったわけですから、もう後には引けません。ルーフをどのくらいの幅で分割するか、格納すべきそれぞれの要素をどのようなリンクで支持するのか、どのような軌跡で動かすのか……。やるべきことは、山のようにありました。旧モデルのリンクシステムでは、新しく設計したルーフを支えるための剛性が足らなかったので、新規のリンクを設計しました。

乗員に干渉しないことなど、必要な条件をクリアできるリンク構造を考えては、コンピュータ上でそれを再現する。うまく動くことが確認できたら、次にリンク剛性を検証します。剛性不足だという結果が出たら、またやり直しです。1つの部品の形状を変えると、他の多くの部品も見直す必要が生じます。そういうことを、何度も繰り返すのです。」

共創の力1

共創の力2

「極めて専門性が高い特殊技術で、我々マツダをサポートしてくれた開発協力会社のスタッフたちも、本当に真心注いで頑張ってくれました。常識的な開発の範疇を超えた我々のリクエストに対して、本当にここまでやるんですか!?と驚かれたこともありましたが、ロードスター RFに対する想いを理解してくれ、いっそう熱く開発に取り組んでくれたことを思い出します。」

美しきルーフの舞、静かなるメカニズムの躍動
ロードスター RFが備える心づくしの価値

そんなある日、コンマ1ミリ単位で設計変更を繰り返す松本のところにエクステリアデザイナーの南澤がやって来て、理想のデザインを実現するために、ある構造物を現状から70ミリ内側に移動してほしいと要望したことがありました。松本は驚いて、こう言いました。

「できません、って。南澤さんも、そうだろうねと返してきましたが、ちょっと見てもらいたいと言うと、私をデザインスタジオで連れて行きました。そこで彼は、デザインを検証するための黒くて細いテープを、前にあるクレイモデルに貼り始めました。“このラインと、このライン……。こっちの方が格好いいよね”って。私は思わず笑って、まぁ確かに格好いいねって答えてましたね。

そこから、また全部ひっくり返してやり直しです。デザインだけではありません。生産も含めた本当に多くのメンバーとそういう時間を過ごしながら完成させたメカニズムなのです。」

“このラインと、このライン……。こっちの方が格好いいよね”って

生産も含めた本当に多くのメンバーとそういう時間を過ごしながら完成させたメカニズムなのです

(左写真:黒いテープが当初のデザインの希望ライン。その下にひかれたラインが設計要求ライン。右写真:最終のライン。当初のデザイン希望ラインより、より理想的なラインに最終的に仕上がった。)

ロードスター RFのリトラクタブルハードトップの開発について、静かに淡々と話し終えた松本が席を立とうとしたとき、最後にこんなことを口にしました。

「もし私がね、それは無理な要求だと突っぱねることができるタイプだったら、仕方がないとデザイナーを諦めさせることができたかもしれません。でも私はそういう性格ではないですし、なによりデザイナーたちが本気でやりたいと思っていて、そのための魂の1本を描いて、どうしてもこれを……と言っているのは分かっていましたから。」

デザイナーたちが本気でやりたいと思っていて、そのための魂の1本を描いて、どうしてもこれを……と言っているのは分かっていましたから。

「彼らが描いた格好よさが、設計を担当する自分の達成感のない仕事によってダメになってしまうことだけは、エンジニアとしても、自分自身としても嫌だったのです。絶対にダメです、それだけは。」

ロードスター RFのリトラクタブルハードトップは、見えないところに潜んだメカニズムが静かに力強く支えています。まるで松本の仕事ぶりを表現したかのようなメカニズムだと、思いませんか。華麗な舞のようなその動きを目にしたら、ぜひ、静かなるエンジニアの存在にも思いを馳せていただければうれしく思います。

* サイト内に登場するロードスター RFは海外仕様車になります。一部の仕様が日本仕様車と異なりますので予めご了承ください。


  

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