
エンジン製造過程の機械加工ラインでは、素材工場で鋳造された素材の面削りや穴加工などの機械加工を行っており、膨大な資源とエネルギーを消費しています。
今回開発したセミドライ加工はその機械加工領域において、廃棄物や消費電力の大幅低減を実現し「低環境負荷型」の機械加工を実現しています。
従来の機械加工では、治具(=刃先)の冷却や潤滑、切り屑の排出や回収など、様々な場面で水溶性油剤であるクーラント液が大量に使用されており、またそのクーラント液を吐出するためにポンプも必要となり、電力も大量に消費されています。さらに、クーラント液をはじめとする廃液も多く、環境問題への対応にはこのクーラント液の使用削減が大きな課題となっています。
セミドライ加工はこの機械加工に必要不可欠といわれるクーラント液を極力使用せず、機械加工を行う技術です。これにより機械加工ラインで発生する環境負荷物質である廃液の量を大幅に削減すると同時に品質の向上も達成することができました。
(1)冷却(加工精度の保証)
(2)刃先潤滑
(3)切り屑の排出
(1)冷却(加工精度の保証技術)
まずは、クーラント液の温度調整機能の代替である加工精度の保証技術です。機械加工にはブッシュと呼ばれるガイドを用いて、±3.5ミクロンの精度で、穴と穴のピッチを加工する工程があります。
加工する設備(鉄)と加工される製品(アルミ)の熱膨張率が異なるため、従来は一定の温度に調節したクーラントを掛けないと精度が出ませんでした。
そこで、クーラント液で温度調節を行わずに精度を確保するために、熱膨張しても加工物と治具の相対位置が変わらないような、自律型の調整機構を開発しました。
具体的には
1) ブッシュを固定している治具をアルミ化して熱膨張率を合わせる
2) 変位方向が同じになるように解析を行い、治具の形状を設計する
3) 治具の変位に追随するフローティングホルダーを採用する
以上により、従来のクーラントによる温度調節以上の、高い寸法精度を確保しています。
(2)刃先潤滑技術
刃先の潤滑については、クーラント液を使用する代わりに生分解性を持つ油をごく少量、ミスト状にしたものをエアにより刃先に送る技術を採用しました。また、通常、刃先を潤滑した油は使い捨てですが、回収して再使用するシステムを導入しました。再使用するため、回収時に混入してしまう他の油(加工機が使う潤滑油等)にも同じ油が使えるよう、油脂メーカーと協力して専用の油を開発しました。

セミドライ加工機・刃先潤滑システム
(3)切り屑の排出技術
従来は能率良く穴を加工するために、ドリルの中を通して先端(刃先)から高圧のクーラントを出し、その勢いで切り屑を穴の外に排出していました。この切り屑の排出に関しては、刃物(ドリル等)の形状を改良し切削の加工条件を最適化することにより、従来の高圧クーラント加工並みの能率を実現しています。
下図は従来の条件と最適条件での電力波形を比較したものです。最適条件では安定した波形で、加工時間も短く、エネルギーが効率よく加工に使われていることがわかります。また、加工時間が短く刃先に熱がたまらないため、刃先冷却の必要性もなくなります。

1) セミドライ加工システムを全体の90%に導入した結果、クーラント液の使用量を84%削減。
2) 電力費は、対象ラインのトータルで40%削減。その内セミドライ加工の寄与分は2/3強。
3) 切削時に使用する油や潤滑油の再使用を行ったことにより、不水溶性廃液の量も削減。
これらにより、機械加工ライン全体で発生する廃液の量を、従来より80%削減することができました。

