AUTOMOBILE COUNCIL 2016 MAZDA DESIGN HERITAGE

時代や思想を象徴したヘリテージが導く、マツダデザインの変遷。

AUTOMOBILE COUNCILのマツダブースでは「MAZDA DESIGN ELEGANCE」のテーマのもと、
歴代の名車や最新モデル、アート作品といったマツダデザインのヘリテージを通して、その歩みをご紹介する展示を行いました。
それぞれの時代の背景や価値観によって、どのようにデザインが変化し、また継承されてきたのか。
過去から現代へとつらなるマツダデザインの歴史をご覧ください。
開催日:2016年8月5日~7日

1960年代 デザイン創成期

三輪トラックの製造を始めてから約30年が経った1960年、
マツダはR360クーペの発売により念願だった乗用車市場への進出を果たしました。
マツダのデザイン部門は1959年に設立されます。
社外の嘱託デザイナーや、イタリアの名門カロッツェリアなど先達たちの力を借りつつ、
自らのスキルを高めながら、純粋に美しいカタチを追求し、1967年、コスモスポーツを発表します。
ロータリーエンジンならではの低く伸びやかで美しい未来的なデザインは、
その後に誕生するロータリースポーツモデルたちのオマージュとなりました。

R360 COUPE[1960]

所得水準の向上やライフスタイルの変化にともない、人々のマイカーへの夢が高まり始めた1960年、R360クーペはマツダ初の乗用車としてデビューします。
軽自動車規格に収まるコンパクトなボディに1290mmという低い車高、2+2のコンパクトなキャビンを包んだスタイリッシュで機能的な美しいクーペフォルムは、当時の日本のカーデザインの最先端をいくものでした。

COSMO SPORT[1967]

世界で初めて2ローター・ロータリーエンジンを搭載した量産車となるコスモスポーツが初めて公開されたのは1963年10月の東京モーターショー(当時の全日本自動車ショー)でした。
デザインを担当したのは入社2年目の、マツダ初の社員デザイナー小林平治です。
彼はロータリーエンジンのコンパクトさを生かし、実寸以上に伸びやかに感じるエレガントなフォルムの未来的なデザインを描きました。
当時の松田恒次社長は、このプロトタイプでモーターショー会場に乗りつけました。

LUCE ROTARY COUPE[1969]

1966年、マツダの最上級乗用車として登場したのがルーチェ1500でした。
イタリア・ベルトーネのオリジナルデザインをもとに、マツダの社内デザイナーが独自のテイストを加味したモダンで繊細なデザインは、イタリア語で「光」や「輝き」を意味する「LUCE」の名にふさわしく、当時の日本車のなかでもまぶしいばかりの個性を放っていました。そして3年後の1969年10月に登場したのが、ハードトップクーペボディに655cc×2の新開発ロータリーエンジンを搭載した、このルーチェロータリークーペです。

1970年代 アメリカンデザインの時代

1970年代になると、マツダの輸出ビジネスは本格化します。
特に北米は、厳しい排ガス規制への対応と優れた高速性能を両立できるロータリーエンジンに経営陣の期待が寄せられ、
デザインも北米市場を狙ったスペシャルティ路線へとシフトします。
マッシブでアグレッシブな野性美あふれるサバンナや、鮮やかな赤のイメージカラーと重厚感のあるコスモAPなどは、この時代を象徴する作品といえます。
一方、コスモスポーツの後を継ぐピュアスポーツモデルとして初代サバンナRX-7が登場。

SAVANNA GT[1972]

1971年に登場したサバンナ(輸出名はRX-3)は、ロータリーエンジンの持つ力強さを表現するため、大草原を駆けめぐる百獣の王ライオンをイメージしてデザインされました。
抑揚の効いたロングノーズ&ショートデッキのスタイルに、獲物を狙う精悍なフロントマスク、ライオンのたてがみをイメージしたエアエクストラクターが与えられ、オーバーフェンダーの組み合わせにより、迫力ある外観を実現しました。
1972年、走りの性能をより強化したスポーツグレードが追加されます。
それがこのサバンナGTです。

1990年代 ときめきのデザイン

1980年代は、パッケージ効率や空力を意識した、合理的で機能的な造型を重視するようになります。
「このデザインは特に欧州で好評を得ますが、同時に個性の希薄化が課題となりました。
そこでマツダらしさは何かを自問し、デザインテーマ「ときめきのデザイン」を掲げます。
そして第一号として1989年に初代ロードスター、1991年にはアンフィニRX-7、1992年にはユーノス500と、
リフレクション豊かな美しい曲面造型を持つ作品を次々と発表しました。
これらは現在の魂動デザインに通じるマツダデザインのDNAといえます。

EUNOS ROADSTER[1989]

のちにデザイン本部長となる福田成徳は、カリフォルニアでの駐在中、合理的なコンパクトカーやトラックに埋め尽くされたハイウェイを見て、理屈抜きで気持ちをワクワクさせるクルマが必要だと考え、ロードスターのデザインに着手します。
シンプルで飽きのこないデザインとしながら、見た瞬間に心を奪われるような豊かな表情を与えるため、マツダデザインが得意とする立体造型を徹底的に磨きました。
誕生したロードスターは世界中で愛され、一度は途絶えたライトウェイトスポーツ文化を復興に導く先駆けとなりました。

2010年代 CAR as ART

2000年代に入ると、ブランドコンセプト「Zoom-Zoom」による躍動感のある作品を発表します。
リーマンショック後には、生え抜きの日本人デザイナーをデザインリーダーにすえ、マツダデザインの本質を求め続けました。
そして2010年、その答えとなる「魂動」デザイン哲学と、それを体現したVision Model「SHINARI」を発表します。
さらに、魂動の哲学を昇華するには本質的な美しさや魂を込めてつくられた工芸品のような深みが必要と考え、「CAR as ART」という理想を掲げました。
これらの哲学や理想は、CX-5から始まった新世代商品群によって一貫して表現・進化され続け、最新のVision Modelである「RX-VISION」へといたります。

RX-VISION[2015]

「CAR as ART」の理想のもと、美を探求する創作活動を行ってきたマツダは、その一つの到達点として2015年、RX-VISIONを発表します。
次世代ロータリーエンジン「SKYACTIV-R」による、圧倒的に低いシルエット。
FRプロポーションの美しさを際立たせるため、不要な要素を省き、魅せたい部分をシンプルに見せることでより強い印象を残す“引き算の美学”を取り入れました。ギリギリまで削ぎ落とすことで生まれる緊張感や、繊細な光の動きによる艶やかな表情の中に、伝統的な日本の美意識を表現しました。
このモデルは、今後のマツダブランドのビジョンを示す、いつか実現したい夢として存在しています。

BIKE by KODO Concept[2015]

工業製品でありながらアートレベルの美しさを追求する「CAR as ART」の理想を体現するために、時にはクルマ以外のプロダクトデザイン活動も行います。
2015年には自転車のデザインに挑戦。
ミラノデザインウィークにて発表しました。
自転車本来の美しさを追求した必要最少限のパーツしか持たないこのトラックレーサーには、研ぎ澄まされたシンプルさの中にロードスターのスタイリングに通じる躍動感を純粋に表現しました。

MX-5 RF[2016]

「美しくて気持ちがいい」。
それがMX-5 RFを一言で表す言葉です。
クローズド時の美しいスタイルとオープン時の爽快なフィールを両立するという逆転の発想から、流れるような美しいファストバックスタイルをデザイナーが提案。その想いに賛同したエンジニアたちがクローズとオープンがスマートに切り替わる一連の美しい所作を持つ“からくり”を実現させました。
大人の優雅さを感じさせる美しいスタイルと、オープンエアの楽しさを高次元で両立したMAZDA DESIGN ELEGANCEの最新モデル、それがMX-5 RFです。

Collaboration Art

魂動デザインの根底にある日本の美意識をきちんと理解し訴求するために、
“魂動”を題材に同じ志を持った日本のアーティストとのコラボレーションを行っています。

卵殻彫漆箱「白糸」

広島で独自の漆器技法を打ち立てた金城一国斎の系譜を継ぐ七代目が、魂動の表現に挑んだのは「白糸の滝」の意匠。
精緻なディテールによる凛とした雰囲気と漆の映り込みの艶やかさを実現しました。

卵殻彫漆箱「白糸」

広島で独自の漆器技法を打ち立てた金城一国斎の系譜を継ぐ七代目が、魂動の表現に挑んだのは「白糸の滝」の意匠。
精緻なディテールによる凛とした雰囲気と漆の映り込みの艶やかさを実現しました。

フレグランス
「SOUL of MOTION」

魂動を題材にした創作活動は、カタチだけに留まりません。
資生堂とのコラボレーションにより、“香り”という見えない価値をデザインすることに挑戦。
日本の美意識が見事に表現されました。

フレグランス
「SOUL of MOTION」

魂動を題材にした創作活動は、カタチだけに留まりません。
資生堂とのコラボレーションにより、“香り”という見えない価値をデザインすることに挑戦。
日本の美意識が見事に表現されました。

鎚起銅器「魂銅器」

創立200年を迎えた鎚起銅器の老舗、玉川堂の匠たちは、魂動の哲学を自らの創作精神に限りなく近いものと受け止めました。
銅の塊を無心で叩くことで自然にでき上がった作品が、この「魂銅器」です。

鎚起銅器「魂銅器」

創立200年を迎えた鎚起銅器の老舗、玉川堂の匠たちは、魂動の哲学を自らの創作精神に限りなく近いものと受け止めました。
銅の塊を無心で叩くことで自然にでき上がった作品が、この「魂銅器」です。

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