第36回メディア対抗ロードスター耐久レース レポート
メディア対抗ロードスター耐久レースとは?

2025年10月4日(土曜日)、静岡県の富士スピードウェイで「第36回メディア対抗ロードスター耐久レース」が開催されました。
メディア対抗ロードスター耐久レースは1989年の初開催以来、自動車専門誌やテレビ、ラジオ、インターネットなどで情報を発信する自動車メディアの編集者や、自動車ジャーナリストたちが参加し、4時間の耐久レースを通じて“走る歓び”を体感し、その魅力をメディアを通じて伝えることで、自動車文化の発展を目指してきた歴史あるモータースポーツイベントです。
初代ロードスターが誕生した1989年にスタートした本大会は、一貫して市販ロードスターをベースにした車両で行われてきました。1989年から1997年までは初代(NA型)、1998年からは2代目(NB型)、2005年には3代目(NC型)、そして2015年からは現行のND型へと移行。36年の歴史の中で、すべての世代のロードスターがこの耐久レースの舞台を走り抜けてきました。使用車両は、ロールケージやレーシングシートなど安全装備を備えたうえで、タイヤの空気圧以外の改造・調整は一切禁止とし、全車イコールコンディションが保たれています。2024年大会からは、環境に配慮したカーボンニュートラル燃料を採用し、持続可能なレース運営を進めています。
レースは1チーム4~5名のドライバーが交代しながら走る耐久レース形式で、過去の成績やドライバーの技量に応じてハンディキャップとして60~150秒の追加ピットストップ時間が課せられます。また、「助っ人ドライバー」、「準助っ人ドライバー」には走行順や運転時間の制限が設けられており、すべてのチームに優勝のチャンスが生まれるルールになっています。ゴールするまで結果が読めないスリリングな展開と観る人にも伝わる耐久レースならではの面白さ、これこそが36年以上続いてきた本大会の魅力といえます。
今大会の注目ポイント
2025年大会は、戦いの舞台を筑波サーキットから富士スピードウェイへ移して開催されました。これまでの筑波サーキット(全長約2.045km/TC2000)はコーナー主体のテクニカルコースでしたが、富士スピードウェイ(全長約4.563km)は超ロングストレートと高速コーナーを持つ国際格式サーキット。コース特性が大きく異なるため、これまでの経験やデータが通用しにくく、ベテランチームも初参加チームも分け隔てなく、すべてのチームにとって新たな挑戦の場となりました。

今年は全21チームが参戦。最多優勝を誇るNEKO RACING TEAMをはじめ、ENGINE RACING TEAM、REVSPEED『R会』、J-wave Racing、LOVECARS!TV!×シラザン50 RT、CAR GRAPHIC RACING TEAMなど、おなじみの顔ぶれが揃いました。そんななか注目チームを集めたチームのひとつが共挑 S耐ワイガヤクラブです。スーパー耐久(S耐)の理念「共挑」に共感した国内5メーカーの技術者たちが、普段のライバル関係を超えて結成したチームです。
共挑 S耐ワイガヤクラブのチーム監督を務める木田努さん(MAZDA SPIRIT RACING)は、このレースへの想いを次のように語ります。
「普段スーパー耐久で競い合っている各メーカーのメンバーが、 “会社の枠を超えて1台でレースを楽しもう”という呼びかけのもと集まりました。今回、メディア対抗レースという公開の場に広がったことで、非常に和気あいあいとしたチームになっています。使用しているロードスターは「走らせて楽しい」とみんなが口をそろえるクルマです。今回は3時間の耐久レースということで、ドライバーだけでなくピットも含めてチーム全体でタスキをつなぎながらゴールを目指します。そこが耐久レースの醍醐味です。まずは安全に、自分たちの力を出し切ってゴールすること。そしてもちろん、レースですから上を狙っていきたいと思います。」

続いて、同チームの木立純一さん(Honda R&D Challenge チーム代表兼ドライバー)もこう語ります。
「一番の目的は、メーカー間の垣根を超えて、1台のクルマを使ってレースをすることによって、モータースポーツの楽しさを広げていきたいということです。ライバルメーカー同士が手を取り合って戦略を立て、一番良い成績を目指す。普段では考えられないことですよね。そこが一番、面白くもあり、難しいところでもあります。私は普段からシミュレーターでトレーニングをしているのですが、NDロードスターで練習しています。実際のレースではFF車(前輪駆動車)で参戦していますが、クルマの基本的な動かし方という点では、ロードスターがいちばん勉強になると思っています。予選では少しミスもあったので、決勝ではそれを取り返したいですね。もちろん安全第一で最後まで走りきることが大事ですし、チーム一丸となって燃費とタイムのバランスを考えながら、決勝に臨みたいと思っています。」
もうひとつ注目のチームが、TEAM CARPRIME & 車選びドットコム RACINGです。今大会から新たに参戦したチームで、ドライバーには第1回大会の優勝者であり5度の優勝経験を誇る大井貴之さん、そしてKYOJO CUPにも参戦するHana Burtonさんを擁し、“初参戦・初優勝”への期待がかかります。
統括編集長であり、ドライバーとして参戦する宇田川敦史さんは、参戦の経緯と意気込みをこう語ります。
「これまで13年間、カービューの監督兼ドライバーとして参加してきましたが、会社が変わってもどうしてもこのイベントに出たいという思いがありました。新しい職場であるファブリカにはライセンスを持つ社員メンバーもいましたし、過去に優勝経験を持つ大井さん、そして現役でレース活動をしているHana Burtonさんにも加わってもらい、今回の参戦が実現しました。全員が“走ることが大好き”なメンバーです。今回は今朝の練習走行がほぼ初走りという状況ですが、チーム全員で試行錯誤しながらこの挑戦を楽しみたいと思っています。もちろん、目標は“初出場・初優勝”。最後まで諦めず、全員でこのイベントを盛り上げながら走り切りたいと思っています。」
予選

決勝レースのスタート順を決める予選は土曜日の朝8時から20分間行われました。予選は各チームから1名のドライバーが代表して走行しますが、「助っ人ドライバー」や「準助っ人ドライバー」の出走は認められていません。予選1時間前から降り始めた雨により、コースは完全なウエットコンディション。滑りやすい難しい路面状況のなか予選は始まりました。
セッション開始と同時にREVSPEED『R会』の佐藤選手、LOVECARS!TV!×シラザン50 RTの木下選手、モノ・マガジンTVの福田選手がコースイン。いずれも実力ある常連チームで、序盤から積極的なアタックを見せます。その中で、1周目から2分25秒757の好タイムを叩き出したのはTEAM CARPRIME&車選びドットコム RACINGの大井選手でしたが、続く2周目にはNEKO RACING TEAMの橋本選手が2分25秒557でこれを上回り首位に浮上しました。橋本選手はさらに5周目で自身のタイムを更新する2分25秒469をマークし、安定した走りを披露します。
予選開始から10分が経過した時点では、NEKO RACING TEAM、TEAM CARPRIME&車選びドットコム RACING、REVSPEED『R会』というトップ3。一方で、共挑 S耐ワイガヤクラブは18番手、マツダの人馬一体チームは13番手と中団からタイムアップを狙うべく予選のタイムアタックに臨みます。その後も各チームがアタックを続けますが、予選開始から15分を過ぎても首位のNEKO RACING TEAMの橋本選手のタイムは破られません。
予選終了まで残り2分を切ったところで、LOVECARS!TV!×シラザン50 RTが2分24秒707という驚異的なタイムを記録、一時は会場を沸かせましたが、走路外走行が確認され、このタイムは抹消となりました。予選終了間際には、橋本選手がさらに2分25秒182へと自己ベストを更新。続いてル・ボランスポーツ ロードスターが2分25秒466を叩き出しますが、わずかに届かず2番手にとどまります。さらにCARトップ&WEB CARTOP RacingがラストアタックでREVSPEED『R会』のタイムを上回り、4番手に浮上しました。
予選は序盤から好タイムを連発したNEKO RACING TEAMがポールポジションを獲得。フロントロー2番手にはTEAM CARPRIME&車選びドットコム RACING、2列目3番手にはル・ボランスポーツ ロードスター、4番手にはCARトップ&WEB CARTOP Racingが続く形となりました。マツダの人馬一体チームは14番手、共挑 S耐ワイガヤクラブは15番手から決勝レースに挑むことになります。
併催イベント

「MAZDA FAN FESTA 2025」との同時開催となった今大会には、早朝から多くのマツダオーナーやマツダファンが駆けつけました。メディア対抗レース参戦チームが使用するピットビルB前には「メディア広場」が設けられ、各媒体が趣向を凝らしたファンサービスを実施。多くの来場者で賑わいました。さらに予選後にはピット裏手がふれあいエリアとして開放され、参加ドライバーとの交流や参戦マシンとの記念撮影など、訪れたファンが直接触れ合える時間が設けられました。

そして決勝直前には、メディア広場にて全参加チームとドライバーが参加する「メディア対抗ロードスター耐久レース オープニングセレモニー」が行われ、会場のムードも一気に高まっていきました。

決勝
3時間で行われる決勝レースは、タイムマネジメントとピット戦略が勝敗を左右する重要な要素になります。ハンディキャップ(追加ピットストップ時間)はレース開始から30分以内に消化することが義務付けられ、ドライバー交代はスタートから45分以内に完了する必要があります。助っ人ドライバーはレース開始から135分経過後に交代して走行でき、準助っ人ドライバーは1回目~3回目の交代時に限り出走が認められます。これらの条件をクリアしながら、どこでタイムを稼ぎ、どこで燃料をセーブするのか、そして誰がどのタイミングで走るのか、その判断ひとつで順位が大きく変わることになります。まさにチーム全体の知恵と経験が試されるレースなのです。


15時、ローリングスタートによって決勝レースがスタート。ポールポジションスタートのNEKO RACING TEAMがホールショットを奪い1コーナーへと飛び込みますが、その直後にStartYourEnginesが首位を奪取。序盤から激しいポジション争いが繰り広げられました。1周目の通過順位は、StartYourEngines(桂選手)を先頭に、NEKO RACING TEAM(佐藤選手)、REVSPEED『R会』(塚本選手)、共挑 S耐ワイガヤクラブ(木立選手)、FMドライバーズミーティング with NATS(RACER KASHIMA選手)と続きます。一方、ル・ボラン スポーツ ロードスターやJ-wave Racing、人馬一体チームはハンディキャップ消化を優先し、1周目からピットインする戦略を選択しました。


3周目。15番手からスタートした共挑 S耐ワイガヤクラブの木立選手が1コーナーでトップに立ち、会場を沸かせます。その後も木立選手は2分36秒台の安定したラップを重ね、後続との差を広げていきます。しかし7周終了時点で14秒もの差を築いた共挑 S耐ワイガヤクラブでしたが、2番手のStartYourEnginesがペースを上げ、10周終了時点でその差は2.465秒に。そして11周目のホームストレートでStartYourEnginesが首位を奪い返します。
レース中盤、StartYourEnginesや共挑 S耐ワイガヤクラブらによる首位争いの裏で勢いを見せたのはREVSPEED『R会』の梅田選手でした。13周目には2分32秒510という驚異的なタイムを記録し、6番手まで浮上。その後もハイペースで周回を重ね、16周目にはついに首位に立ちます。そしてレースは2番手のENGINE RACING TEAM、3番手のPTC CAR and DRIVER RacingがREVSPEED『R会』を追う展開になりました。
20周を終えてもREVSPEED『R会』がトップを維持。2番手のENGINE RACING TEAM(橋本選手)とは1分22秒903の差、3番手のPTC CAR and DRIVER Racingはその58秒後方。REVSPEED『R会』は2分36?37秒台で安定したラップを刻み続け、他を圧倒する展開に持ち込みます。
31周を終えると、REVSPEED『R会』がドライバー交代のためピットイン。梅田選手は実に2周差のリードをつくり次のドライバーとなる佐藤選手にマシンを引き継ぎます。フィニッシュまで残り1時間30分の時点での順位は1位 REVSPEED『R会』、2位 ENGINE RACING TEAM、3位 NEKO RACING TEAMのトップ3になっています。
35周目、トップのREVSPEED『R会』が再びピットイン。同時にENGINE RACING TEAMとJ-wave Racingもピットインを行いそれぞれドライバー交代を行います。

レース終盤、REVSPEED『R会』は42周を消化してもなおトップを堅守。2番手のNEKO RACING TEAMとは2分02秒差、3番手のLOVECARS!TV!×シラザン50 RT はNEKO RACING TEAMの 28秒後方を走行しています。44周を迎えると、コース上に濃い霧が立ち込め、日没も近づいて視界が悪化。ウエットコンディションと相まって、各チームは神経をすり減らしながらの走行を強いられました。

レースは残り30分。トップは依然としてREVSPEED『R会』。2位 PTC CAR and DRIVER Racingとの差は1分44秒とその差はなかなか縮まりません。54周を過ぎたあたりでPTC CAR and DRIVER Racingがペースを上げ、毎ラップ8秒ずつREVSPEED『R会』との差を詰めますが、1分3秒差まで迫ったところで最後のドライバー交代を行うためピットイン。代わってJ-wave Racingが2位へ浮上するも、REVSPEED『R会』との2分以上の差を埋めることはできず、REVSPEED『R会』は大差をつけたまま逃げ切り、チェッカーフラッグを受けました。

REVSPEED『R会』は2000年に行われた第11回大会以来となる2度目の優勝。2位はJ-wave Racing、3位はENGINE RACING TEAMという表彰台に。注目のTEAM CARPRIME&車選びドットコム RACINGは8位、共挑 S耐ワイガヤクラブは13位、マツダ開発陣による人馬一体チームは6位という結果となりました。
優勝したREVSPEED『R会』の後藤比東至選手は、レース後、感慨深げにこう語ります。「25年ぶりの優勝らしいです。去年も最後に止まってしまったし、辛いレースが続いていたので、みんなで勝とうという気持ちをひとつにして戦いました。本当にみんなのおかげです。」

REVSPEED『R会』の圧倒的な勝利で幕を下ろした第36回メディア対抗ロードスター耐久レース。果たして来年はどのようなレースが繰り広げられるのでしょう。REVSPEED『R会』の連覇なるか、最多10度の優勝記録を持つ「NEKO RACING TEAM」が再び優勝争いに戻るのか、それとも過去未勝利チームの大躍進となるのか、第37回大会も今からとても楽しみです。

第36回 メディア対抗ロードスター耐久レース レース結果
優勝 REVSPEED『R会』:塚本 剛哲 佐藤 和徳 梅田 剛 後藤 比東至 蘇武 喜和 監督:相馬 勉
2位 J-wave Racing:ピストン西沢 渡辺 圭介 富澤 勝 瀬戸光 唯志 監督:森屋 貢一
3位 ENGINE RACING TEAM:村上 政 村山 雄哉 任 剛一 山田 遼 橋本 隼 監督:佐野 順平
第36回メディア対抗ロードスター耐久レース LIVE中継(YouTube)
https://youtube.com/live/hHi9tO0ZJVM
