HERITAGE STORY

コルクと聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか?
雑貨店にあるコルクボードや、ワインの栓を思い浮かべる方も多いかもしれません。実はコルクは、工業製品にも多く使われてきた素材なのです。

マツダが本社を構える、広島。中国地方の山間部には、アベマキという木が広く分布していました。
コルクと言えば南欧産のコルクガシが有名ですが、アベマキはブナ科の落葉高木でコルク層が厚く、コルクガシの代用となる木です。
そのため広島湾を中心に発達した木造船の建造所では、近世中期からこのアベマキ樹皮(槙皮)を造船材として使用していました。

山にも海にも近い広島は、コルクの製造にはうってつけの地域だったのです。

アベマキとコルク

その広島で、マツダは1920年1月30日、旧広島市中島新町(現在の広島市中区中島町)にコルクを製造する会社、東洋コルク工業株式会社として発足。
コルクの瓶栓に始まり、まだ当時の日本では珍しかったコルク板の製造への挑戦など、当時のモノづくりへのこだわりは現在のマツダへ引き継がれています。

その後、1927年に社名を「東洋工業株式会社(以下、東洋工業)」と改め、コルク製造でも発揮された飽くなき挑戦心と技術力を持って機械の製造へ舵を切りました。
さく岩機や工作機械、三輪トラックの生産を始めとして製造技術を積み上げ、現在の自動車メーカーとなったのです。

設立当時の東洋コルク工業

SUSTAINABILITY

東京モーターショーで世界初公開となった、MAZDA MX-30。そしてその内装には、マツダにとっての出発点である、コルクが採用されています。
このクルマのインテリアは、お客様が自然体でいられる空間として作り上げています。その開発過程で重要なことが、素材選びでした。
マツダにとって新たな表現に挑戦すべく、多くの検討を行いました。

その中でたどり着いた素材の一つ、それがコルクです。理由は、コルクの持つ表情や暖かみが、その空間づくりにふさわしかったこと。
そして、コルクは木を伐採するのではなく、木の皮を剥いで作られるもので、約8~10年ごとに収穫することができる環境にやさしい素材だったからです。

ただ、創業時コルクを取り扱っていたとはいえ、現在もそのノウハウを持っているわけではありませんでした。この実現に向けては、パートナーが必要不可欠だったのです。

 

そこで協働したのが、岡山県に本社を置く内山工業株式会社(以下、内山工業)です。

内山工業とマツダの関係は東洋工業時代の1944年に遡ります。
東洋工業が機械の製造に舵を切った際、明治時代から高いコルク製造技術を誇っていた内山コルク工業所(現:内山工業)にコルク事業を引継ぎました。
今日でもマツダと内山工業は、エンジンの性能を保つために非常に重要な各種ガスケットの供給を通じてマツダと繋がり続けています。

コルクという素材をクルマのインテリアに用いることは、一筋縄ではいかない、新たな挑戦の連続でした。
加工方法そのものから、暖かみのある見栄えや触れたときの自然な肌触りといったデザイン性、そして耐久性。目指す目標は高く、クリアすべき課題は山積みでした。

それでも、人と共に創る姿勢を貫き、挑み続けたからこそ、実用性もデザイン性も兼ね備えた、MX-30のインテリアとして実現したのです。

コルク

MX-30 Interior Film-Cork-

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