ロードスター・パーティレースでの開発風景(ボッシュ株式会社提供)
ロードスター・パーティレースでの開発風景(ボッシュ株式会社提供)
ロードスターを作った開発者たち
ロードスターはたくさんのファンに愛され、それぞれのオーナーがそれぞれの『走る歓び』を見出しているクルマです。通勤や買い物で出かけるだけではなく、モータースポーツにチャレンジしたいという方々もたくさんいらっしゃいます。モータースポーツのエントリーモデルとしても選ばれるロードスターだからこそ、その思いを後押ししたい。そこで生まれたのが『DSC-TRACK』です。これまでマツダのDSCに携わってきたボッシュ株式会社(以下、ボッシュ)の大浦さんと、マツダのエンジニア2人に話を聞きました。
ロードスター DSC-TRACK CONCEPT
ロードスター DSC-TRACK CONCEPT
隈部
「私は、2000年からDSCの開発を担当してきて、もう20年以上経ちますね。ここ5年ほどは宮川と一緒に、ロードスターだけでなくマツダの全車種のDSCを担当しています。ロードスターのようにボッシュのDSCを採用する車種では、大浦さんとずっと一緒に開発を続けてきました」
隈部
「私は、2000年からDSCの開発を担当してきて、もう20年以上経ちますね。ここ5年ほどは宮川と一緒に、ロードスターだけでなくマツダの全車種のDSCを担当しています。ロードスターのようにボッシュのDSCを採用する車種では、大浦さんとずっと一緒に開発を続けてきました」
操安性能開発部 シニアスペシャリスト 隈部重文
操安性能開発部 シニアスペシャリスト 隈部重文
大浦
「そうですね。私もRX-8以来、約20年もの長期間、マツダのプロジェクト開発に携わらせてもらっています。隈部さんがOKという性能になるまで、私自身で走り込んで技術を育成しますし、開発エンジニア皆が納得できる性能になるように一緒に仕事をしています」
大浦
「そうですね。私もRX-8以来、約20年もの長期間、マツダのプロジェクト開発に携わらせてもらっています。隈部さんがOKという性能になるまで、私自身で走り込んで技術を育成しますし、開発エンジニア皆が納得できる性能になるように一緒に仕事をしています」
ボッシュ株式会社 大浦 靖之様
* 以降、敬称略させていただきます。
ボッシュ株式会社 大浦 靖之様
* 以降、敬称略させていただきます。
大浦
「『DSC-TRACK』については、車両運動性能開発のリーダーである梅津さんから提案があったのがスタートです。梅津さんがロードスターのワンメイクレースである『ロードスター・パーティレース』に参戦した時、エントラントの皆さまと交流していろいろと気づきを得たそうです。モータースポーツに挑戦しているドライバーは、タイムアップを狙うためにDSCをオフにして走っているので、スピンしたりコースアウトしたり、クラッシュしてしまうことも……。そういったリスクを少しでも減らしながら、ドライバー自身の運転スキルだけでタイムが出せるようなDSC制御を造りたいね、というところから開発が始まりました」
宮川
「まずは『DSC-TRACK』をどのような制御にするかという、最初のコンセプト決めが難しかったです。たくさんのスポーツカーを乗り比べてみて、『このメーカーのESCは制御介入が早く、ドライバーをあまり信用していないようだ』とか、『パワーがあるクルマならDSCが作動した時にエンジントルクを絞ってもいいけど、ロードスターだと失速しすぎてしまう』など、スポーツ走行用の横滑り防止制御と言っても、メーカーやクルマによってかなり特性が違うことも分かりました。『人馬一体のコンセプトに基づいてドライバー自身の運転の主体性を尊重し、制御で邪魔をしないようにしながらも、危険な挙動はできるだけ助けたい』という方向性が決まってからは、一気に開発を進められたと思います」
宮川
「まずは『DSC-TRACK』をどのような制御にするかという、最初のコンセプト決めが難しかったです。たくさんのスポーツカーを乗り比べてみて、『このメーカーのESCは制御介入が早く、ドライバーをあまり信用していないようだ』とか、『パワーがあるクルマならDSCが作動した時にエンジントルクを絞ってもいいけど、ロードスターだと失速しすぎてしまう』など、スポーツ走行用の横滑り防止制御と言っても、メーカーやクルマによってかなり特性が違うことも分かりました。『人馬一体のコンセプトに基づいてドライバー自身の運転の主体性を尊重し、制御で邪魔をしないようにしながらも、危険な挙動はできるだけ助けたい』という方向性が決まってからは、一気に開発を進められたと思います」
操安性能開発部 エンジニア 宮川優一
操安性能開発部 エンジニア 宮川優一
大浦
「開発中は、エンジニア同士の制御作動イメージのすり合わせが大変でした。『ここまで助ける必要ない』という人もいれば、『もっと早く効かせるべき』という人もいて(笑)。最初はさまざまな意見が出ました。確かに、ロードスターは初めてサーキットに行く人も想定しなければいけませんし、サーキットエキスパートのお客様もたくさんいらっしゃいますからね。さまざまなお客様の安心・安全を考えて意見を交わし合い、試作車で確認しながら完成形のイメージを固めていくのです。サーキット初心者の安全を守ることと、運転のスキルアップにつながることを目標として、制御開発を進めました」
大浦
「開発中は、エンジニア同士の制御作動イメージのすり合わせが大変でした。『ここまで助ける必要ない』という人もいれば、『もっと早く効かせるべき』という人もいて(笑)。最初はさまざまな意見が出ました。確かに、ロードスターは初めてサーキットに行く人も想定しなければいけませんし、サーキットエキスパートのお客様もたくさんいらっしゃいますからね。さまざまなお客様の安心・安全を考えて意見を交わし合い、試作車で確認しながら完成形のイメージを固めていくのです。サーキット初心者の安全を守ることと、運転のスキルアップにつながることを目標として、制御開発を進めました」
隈部
「大浦さんには苦労をかけることも多かったのですが、データだけに基づいて開発するのではなく、マツダが大事にしている『人の感覚』を重視しながら、一緒にセッティングを煮詰めて、最終的には皆が納得できる性能に辿り着きました」
マツダファン・エンデュランス(筑波サーキット)
マツダファン・エンデュランス(筑波サーキット)
大浦
「新鮮だったのは、『マツダファン・エンデュランス』という耐久レースに、『DSC-TRACK』を搭載した試作車でマツダの開発ドライバーの皆さんと一緒に参戦したことです。実際にレースで走らせてみると、自分でも助けられたなというシーンが何度かありました。やはりモータースポーツの現場で制御をきちんと確認できたということも技術の自信につながりましたね」
宮川
「私も耐久レースに出させていただいたのは印象的でしたね。タイヤのグリップが熱で低下したり、抜きつ抜かれつのバトルになったときには無理をして挙動を乱すこともあったのですが、『DSC-TRACK』が作動してくれてとても安心感があったんです。一度これを知ってしまったら戻れないという感覚ですね(笑)」
レース現場でのDSC-TRACK制御開発
隈部
「『DSC-TRACK』が搭載されたことで、もっとモータースポーツを楽しむ方が増えて、その敷居を下げられたらと思っています。私たちが開発しているDSCは、ふだんお客様が安全に運転していれば体験することのない技術です。でも、もし何かあった時に『付いていてよかった』と思ってもらえることが大切だと思っています。それは『DSC-TRACK』でも一緒ですね」
宮川
「『DSC-TRACK』とうまく付き合うことで、自分自身のドライビングも安全にスキルアップできると思います。ロードスターをうまく乗りこなせるようになれば、制御が全く介入しなくなるということもありますから。それくらい、ドライバー自身の運転を邪魔することはないので、思う存分モータースポーツを楽しんで欲しいですね」
隈部
「『DSC-TRACK』が搭載されたことで、もっとモータースポーツを楽しむ方が増えて、その敷居を下げられたらと思っています。私たちが開発しているDSCは、ふだんお客様が安全に運転していれば体験することのない技術です。でも、もし何かあった時に『付いていてよかった』と思ってもらえることが大切だと思っています。それは『DSC-TRACK』でも一緒ですね」
宮川
「『DSC-TRACK』とうまく付き合うことで、自分自身のドライビングも安全にスキルアップできると思います。ロードスターをうまく乗りこなせるようになれば、制御が全く介入しなくなるということもありますから。それくらい、ドライバー自身の運転を邪魔することはないので、思う存分モータースポーツを楽しんで欲しいですね」
ロードスター・パーティレースでの開発風景(ボッシュ株式会社提供)
ロードスター・パーティレースでの開発風景(ボッシュ株式会社提供)