• この記事は2023年11月時点のものです。
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ロードスターを作った開発者たち

ロードスターの育て方

操安性能開発部 首席エンジニア 梅津大輔

操安性能開発部の梅津大輔は、車両運動性能を開発するスペシャリストとして、プロジェクト立ち上げの初期から長らく4代目ロードスターに携わってきた。4代目の発売後も継続的に「人馬一体感」を進化させるための技術開発をリードし、それがキネマティック・ポスチャー・コントロール(KPC)や、今回の商品改良で採用した「アシンメトリックLSD」、「DSC-TRACK」といったユニーク技術の実現につながっている。

操縦安定性や乗り心地の領域にとどまらず、ロードスター全体の開発に目を配っている彼に、ロードスターの「育て方」を聞いた。

「4代目ロードスターが発売されてから約8年が経ちますが、私がロードスターの開発に携わってからは15年以上になります。4代目の開発ではプロジェクト立ち上げの初期から企画検討に参加し、操縦安定性開発チームの一員としてサスペンションやステアリングの開発を担当しました。また、デザイン開発にも評価ドライバーとして参加し、デザイナーたちと議論を重ねながら、ドライバーから見える視界の造形や、ハンドルやシフトノブの形状を一緒に決めていったことが印象に残っています」

「4代目ロードスターが発売されてから約8年が経ちますが、私がロードスターの開発に携わってからは15年以上になります。4代目の開発ではプロジェクト立ち上げの初期から企画検討に参加し、操縦安定性開発チームの一員としてサスペンションやステアリングの開発を担当しました。また、デザイン開発にも評価ドライバーとして参加し、デザイナーたちと議論を重ねながら、ドライバーから見える視界の造形や、ハンドルやシフトノブの形状を一緒に決めていったことが印象に残っています」

操安性能開発部 梅津 大輔

操安性能開発部 梅津 大輔

「ロードスターを開発して世に送り出す度に、その時にやれることは全てやり切って、一切妥協せず、納得できるまで性能を育成してきました。それでも、開発を終えてしばらく経つと、『あの部品はこうしたらもっと良くなるんじゃないか』とか『こんな技術を使ったらどんなフィーリングになるのだろう』という気持ちになります。その時々はもちろんベストを尽くしているのですが、『良いのができたな』とそこで自己満足して終わっていたら進歩はないので…。ロードスターならではの人馬一体感を追求し続けることが自分の役割と思っています」

人馬一体感の進化

「今回のロードスターの商品改良では、新たな法規対応のために電気・電子プラットフォームを一新することになりました。これに合わせて電動パワーステアリングやDSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)など大物のシステムを刷新することになり、これは人馬一体感を進化させるための絶好の機会と思いました。そこで、『ロードスター・パーティレース』への参戦を通して必要性を感じていた、サーキット用DSCである『DSC-TRACK』と、KPCの開発を通してその効果に着目し、技術開発を進めていた『アシンメトリックLSD』の採用を提案しました。特にLSDについては、AWDの技術開発を通して、差動制限や駆動力分配が車両運動に与える影響を検証してきたこともあり、人馬一体感を進化できる可能性があると考えました」

 

「LSDはドライブトレインの一部であることから、マツダにおいてもパワートレイン開発本部の担当部品です。しかし、『シャシーエンジニアは、サスペンションとステアリング、タイヤだけ』、『パワートレインエンジニアは、エンジンとトランスミッション、駆動系だけ』という区分けは作り手の都合であり、お客様にとっては関係のないことです。ひとつのクルマとして人馬一体感を提供しようと思ったら、車両運動に関わる全ての領域をクロスオーバーさせて考えないといけない。それが今回の改良の一番のポイントだと思います」

ファンと共に育む

「今回の開発では、『DSC-TRACK』を搭載した試作車で『ロードスター・パーティレース』や『マツダファン・エンデュランス』に賞典外で参戦し、モータースポーツの現場で技術検証をしたことも新たなチャレンジでした。ロードスターユーザーであるエントラントの皆様と一緒に、レース実戦で試作車を走らせて課題を出しながら、現場でさまざまなご意見、ご要望を伺うことで技術を育成していくという… 言わば、ファンの皆様が築いてきた場を借りた、『ファンと共に育む』公開開発ですね。単独でテストコースを走るだけでは分からない、実戦ならではの気づきもたくさんありました」

ロードスター・パーティレース

(岡山国際サーキット)

ロードスター・パーティレース

(岡山国際サーキット)

操安性能開発部 開発ドライバーチーム

(左から)宮川、梅津、伊藤、髙橋

操安性能開発部 開発ドライバーチーム

(左から)宮川、梅津、伊藤、髙橋

世界の道で走り込む

「また、ロードスターはドイツ・ニュルブルクリンクやアメリカ、冬の北海道など、さまざまな道を走って性能育成しています。ニュルブルクリンクはタイムアタックのイメージが強いかもしれませんが、元々の丘陵地帯の地形に沿ってコースが造成されたこともあり、さまざまなアンジュレーションの路面があるので、周辺の一般道も含めると実はとても効率的に性能開発ができるのです。一般道にあり得る厳しい路面やカーブ、勾配変化を寄せ集めた、世界一のテストコースとも言えます。今回の商品改良車でもしっかり走り込んで育成し、より安心して意のままに走れるようになったと思います」

「また、ロードスターはドイツ・ニュルブルクリンクやアメリカ、冬の北海道など、さまざまな道を走って性能育成しています。ニュルブルクリンクはタイムアタックのイメージが強いかもしれませんが、元々の丘陵地帯の地形に沿ってコースが造成されたこともあり、さまざまなアンジュレーションの路面があるので、周辺の一般道も含めると実はとても効率的に性能開発ができるのです。一般道にあり得る厳しい路面やカーブ、勾配変化を寄せ集めた、世界一のテストコースとも言えます。今回の商品改良車でもしっかり走り込んで育成し、より安心して意のままに走れるようになったと思います」

ドイツ・ニュルブルクリンク

ドイツ・ニュルブルクリンク

「アメリカはロードスターの最大市場で、たくさんのファンの皆さまに期待していただいておりますので、コンクリートのフリーウェイやカントのついたカーブなど、現地特有の環境で走り込み、電動パワーステアリングなどのチューニングを行いました」

「アメリカはロードスターの最大市場で、たくさんのファンの皆さまに期待していただいておりますので、コンクリートのフリーウェイやカントのついたカーブなど、現地特有の環境で走り込み、電動パワーステアリングなどのチューニングを行いました」

アメリカ・カリフォルニア エンジェルスクレストハイウェイ

アメリカ・カリフォルニア エンジェルスクレストハイウェイ

愛嬌のあるスポーツカー

「世界の道で走らせると、改めてロードスターの立ち位置を認識できる気がします。ニュルブルクリンクでは、さまざまな自動車メーカーが共同でテストを行っていることもあり、世界に名だたるブランドのハイパワーなスポーツカーに追い越されてばかりですが、ロードスターの場合はあまり煽られることはありません(笑)。共用のパーキングエリアでは各メーカーの試作車がずらりと並ぶのですが、欧州メーカーのエンジニアがわざわざロードスターを見に来たり、『実は俺も持ってるんだ』と声をかけてくる開発ドライバーがいたり…パワーは小さく最高速は遅くても、唯一無二の魅力のある『愛嬌のスポーツカー』なのだと再認識させられます。アメリカでは横に並んだクルマのドライバーが大抵サムアップしてくれますしね(笑)。私が仕事をする時には、そんなファンの皆さん一人ひとりの目線を思い出して、それぞれが笑顔になってくれる、楽しんでもらえるロードスターを造ろうと思います。当たり前のことですが、ロードスターの開発は『自分がこうしたい』ではなく、常にフラットな目線で、ファンの期待に応えられているかを確認しながら進めていく。それが何より大事なことだと思っています」

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