タンレザーシート復刻の裏側にせまる
ロードスター東北ミーティングが開催された翌日に山形県山形市を訪問した。
訪問したのはカーシート用の革素材を製造するミドリオートレザー株式会社の本社工場だ。
タン色のレザーシートが特徴的なNAロードスターVスペシャルのシート革は当時山形で製造されており、
30年経ったいま、タン色の革が再びここで作られている。
現在、NAロードスターレストアサービスのメニューA(インテリア)でシートの表皮張替を行っているが、この特徴的なタン色のシートを蘇らすためにサービス開始前には様々な検討を行った。
まずはシート本体を丸ごと復刻生産することを検討したが、材料や価格など様々な課題があり実現できなかった。
そして次にシート表皮だけの復刻を検討したが、20年以上使われ続けてくたびれたクッションに新車当時と同じ形状の新品カバーを被せても納得できる形になるはずもない。
その後、色々と検討を重ねた結果、当時NA用シートの縫製をされていたユアブランド株式会社にもご協力頂き、シートのクッションを補強した上でその車に合う様にシートを張り替えるという現在のレストアメニューにたどり着いた。
また張り替えの検討時、当初はありもので似た風合いの革を使用して試作品を作ったが、やはり新車当時の感じをお客様にもう一度体感して頂きたいという我々のこだわりで、当時と同じ革素材を復刻することとなった。
そしてその復刻に協力頂いたのがミドリオートレザー株式会社なのである。
(シート革を張替えたトライアル車両)
(シート革を張替えたトライアル車両)
今回はミドリオートレザー株式会社技術部の氏家立明様、技術開発室の小野孝士様、
営業本部の永田俊輔様にレストア用シート革の製造についてお話を伺った。
(左から氏家様、小野様)
(左から氏家様、小野様)
30年前の新車の質感を再現
(NAロードスター用 レザーシート流シボ)
(NAロードスター用 レザーシート流シボ)
山形は水が綺麗で、革のなめしには水を大量に使うので革屋の立地条件として良いところです。
当時は山形市内の別の工場で製造していたのですが、過去に製造した革素材はマスター(色味、柄の見本)で管理しており、要望があればいつでも当時と同じものを作ることができます。
加工技術や管理方法は進化していますが、原材料(牛革)自体は30年前からずっと変わっていません。そのあたりは他の自動車部品と違って融通が利くのかもしれません。
今回は当時のNAロードスターのマスターをベースにして、レストア用にマスターを新しく作り直しました。
レストアに使われている革の柄は『流れシボ』といって当時と全く同じ柄で、革の種類も当時と同じものを使っておりますので、柔らかさや触り心地も当時と同じものが再現できていると思います。
1枚1枚が職人の手作り
天然素材の本革には工芸品の様に美しい風合いや細かな肌触りといった性能も求められ、職人の伝統技術と現在のテクノロジーを掛け合わせて本革製品を作っています。
レストア用の革はオーダーを受けてから特別に作っており、薬剤処理やなめし加工は量産品と同じ最新設備を使い、タン色の塗装は1枚1枚を手作業でベース、カラー、トップの3層に塗って仕上げています。
手作業でムラなく均一に塗るには高い技術力が必要で、特別な社内資格を持った職人が手吹きで作業を行います。普段は新型車向けの試作品やショーモデル用の特注品などを手掛けているエキスパート達です。
(色の調合を行っています。)
(色の調合を行っています。)
(手吹きの様子)
(手吹きの様子)
今回はタンレザーシート革の復刻を通じて、我々のレストアサービスのこだわりの一端を紹介させて頂いた。
また、今回取材させて頂いたミドリオートレザー株式会社の皆さまをはじめ、様々な方に協力頂いて我々のこだわりが実現できていることに改めて感謝を申しあげたい。
最後に余談であるが、山形といえば米沢牛など和牛の産地としても有名だが、いわゆる霜降りと呼ばれる様な脂の乗った牛の革は自動車シート用としてはあまり適しておらず、ロードスターのシートに米沢牛は使われていないそうだ。
使用しているのは自動車シート用に適した海外産の牛とのことであった。
(取材に協力いただいたミドリオートレザーの皆様。左から、小野様、氏家様、永田様)
(取材に協力いただいたミドリオートレザーの皆様。左から、小野様、氏家様、永田様)