【コラム】
8月8日は屋根の日

皆様は8月8日が「屋根の日」ということをご存知でしたか? 平成15年に日本記念日協会が全日本瓦工事連盟の要請を受けて設定したそうです。瓦は日本の家に欠かせないもので、日本の気候や風土に合わせて作られたものです。 家屋を風雨や日光、太陽熱から守る大切な働きがあります。 ご存知のとおりロードスターにも屋根があります。 屋根と言っても、ロードスターの屋根は幌と呼ばれており、開閉することが出来ます。 幌もドライバーを風雨、日差し、ほこりなどから守ってくれる大事なものです。古くは皮や、丈夫な頒布が使われていた時代もありましたが、時代が進むにつれて、軽くて折り畳みができ、耐久性のあるビニール材料がヨーロッパのオープンカーで使われるようになりました。

新車販売当時のNAロードスターの幌もドイツ製の生地を使用しており、ヨーロッパのオープンカーでは実績のあるものでした。そして、後ろにあるリアスクリーンはイタリア製で、いずれもオープンカーの本場のヨーロッパの材料を使っています。NAロードスターでは、このリアスクリーンが折り畳んだ時にしわにならないように、スクリーンをファスナーで開閉できるように工夫を施しました。そのためNAロードスターは、幌を閉じているクローズの状態でも、リアスクリーンだけをファスナーで外して開放できるようになっています。これは、お客様の間ではNA開けと呼ばれるようになりました。クローズの状態でもリアスクリーンがないので、窓から入った風がドライバーを通り過ぎリアスクリーンから後方に流れていく、そんな風の流れができて、とても心地良いと感じるのです。

NAが誕生して8年後には2代目のNBが登場しました。NBの幌は、リアスクリーンがビニール製のため後方が見えにくいというNAの課題に対応して、ビニールからガラスに変更されました。この材質変化とともに、ファスナーでスクリーンを外すという構造は無くなりました。クローズ時の後方視界を確保するという、商品性改良の重要性を鑑み、好評だったNA開けは無くなってしまいました。

NAロードスターのレストアサービスを検討する過程で、ファンの多くのお客様よりNA開けのできるビニール製の幌を復刻して欲しいというリクエストを頂きました。しかしながら、既にドイツ製の幌生地は生産できない通知を受けており、新しい幌生地を探すことから始めなければなりませんでした。世界中の幌の生地メーカーを調査し、アメリカで幌に利用可能なビニール生地を作っているメーカーがあるという情報を入手しました。この新しい材料が、マツダの培ってきたロードスターの品質にミートするかどうか、単品の強度、耐候性、耐薬品性などをひとつずつ調査し、単品では判らない所は、実際に幌を製作し、実車に装着して、開閉耐久試験や、実車での車体振動を加えた摩耗耐久試験などを重ね、ようやく、NAロードスターの幌としての確かな品質を確認することが出来ました。幌の製作や試験を献身的に実施してくださった三和工業株式会社様、株式会社東洋シート様のお力添えのおかげで、NAロードスターの幌を復刻することができたのでした。

17年12月から販売を開始し、復刻したNAロードスターの幌は日本国内だけでなく、広島から世界各地のNAオーナーの元にも届けられています。8月8日が「屋根の日」ということを知り、NAロードスターの屋根、つまり幌のエピソードを皆様と共有したいと思い、記事を掲載させていただきました。また、復刻にご協力頂いた三和工業株式会社様、株式会社東洋シート様に、この場を借りて改めて感謝を申し上げます。

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