SKYACTIV-G 2.5T

このエンジンで新しいターボの価値を創造したい。

思い通りに走ることができるクルマ以外は、絶対につくりたくない。
そんな想いを貫いて開発に取り組みました。

エンジン開発者 星野 彦一

* 本ページに掲載の車両は現在の仕様と一部異なる箇所がございます。

まず最初に、今回のエンジンの狙いをお話ししましょう。
それは、余裕のトルクを意のままに操る気持ちよさを体感していただきたい。そして、燃費を気にせず気軽にロングドライブに出かけていただきたい。
そういった想いを込めて開発しました。

“余裕のトルク”というと、マツダにはディーゼルエンジンがありますし、その他、大排気量NAエンジンを思い浮かべるでしょう。
確かにマツダのディーゼル車が備える余裕のトルクはお客様に好評をいただいています。でも、ガソリンエンジンを好まれるお客様もいらっしゃると思います。
今回は、ガソリンエンジンで余裕のトルクを実現するという考えもあったのですが、私たちは大排気量NAという選択をしませんでした。なぜなら、コンパクトで軽量な直4ターボエンジンのほうが燃費も良いし、コストも掛からなくて価格を抑えられる。つまり、お客様により貢献できるというわけです。“無駄な過給はしない、適切な過給をする”というマツダ独自のターボの考え方のもと、“過給ライトサイジング(Right sizing)”をコンセプトとして開発をスタートしました。

実は私自身、学生の頃は、よくクルマで鈴鹿サーキットや富士スピードウェイに遠出していたんです。
荷物を積んで、4、5人でレース観戦に。その時に乗っていたハッチバックに搭載されていたのが、直6 2.8LのNAエンジン。さすがのトルクでまったく余裕でした。全然疲れないし。遠出するときは、トルクに余裕のあるクルマが一番だなって実感したんです。
でもガソリン代はもう少し安くならないかな、とはその頃から思っていました。

そんな経験からも、「余裕のトルクと優れた燃費性能を両立させつつ、思い通りに走れるエンジンは、絶対にお客様に喜んでもらえるはず」という確信をもって、今回のターボエンジンは何としても完成させようと強く思っていましたね。

実は私自身、学生の頃は、よくクルマで鈴鹿サーキットや富士スピードウェイに遠出していたんです。
荷物を積んで、4、5人でレース観戦に。その時に乗っていたハッチバックに搭載されていたのが、直6 2.8LのNAエンジン。さすがのトルクでまったく余裕でした。全然疲れないし。遠出するときは、トルクに余裕のあるクルマが一番だなって実感したんです。
でもガソリン代はもう少し安くならないかな、とはその頃から思っていました。

そんな経験からも、「余裕のトルクと優れた燃費性能を両立させつつ、思い通りに走れるエンジンは、絶対にお客様に喜んでもらえるはず」という確信をもって、今回のターボエンジンは何としても完成させようと強く思っていましたね。

ひと昔前の常識を覆す2つの課題。
今だから笑って話せますが、失敗や不安の連続でした。

今回のターボエンジン開発には、2つの大きな課題がありました。
1つは、NAエンジン並みのレスポンスとトルクコントロール性の実現。もう1つが、実用燃費の改善です。

通常のターボエンジンは、走りの面では“ターボラグ”が生じ、アクセル踏み始めの反応が遅くなるという問題があります。また燃費の面では低い圧縮比が熱効率を悪化させたり、過剰なノックリタード(点火タイミング遅らし)や燃料噴射が低燃費率領域を狭めたりすることで、これらが実用燃費に大きな影響を与えます。

つまり、NAエンジン並みのレスポンスとコントロールに相対する課題は“ターボラグ”の解消で、実用燃費改善に相対する課題は高い圧縮比と低燃費率領域の拡大です。
これらの解決には、ブレークスルー技術が必要でした。

ターボラグをなくすことも、高い圧縮比も、低燃費率領域の拡大も、ひと昔前の常識を覆す課題です。
例えるならエベレスト登山に挑戦するような気持ちで、「やってやる」という想いを抱く反面、不安もありました。
量産品質に仕上げるまでの過程は、ハードとソフトの両面で仕様変更の繰り返し…。しかし、先行技術開発部門と量産開発部門、さらにサプライヤーさんの部品開発にいたるまで、一丸となって多くの課題に取り組んで目標を達成したんです。
これまでにない技術を実現して世に送り出したい。そしてその先にある、お客様が喜ぶ顔を見たい。
開発に携わった多くの担当者の一人ひとりがそういう気持ちで取り組み、チームが一つになれたからこそ実現できたと思うんです。

ターボラグをなくすことも、高い圧縮比も、低燃費率領域の拡大も、ひと昔前の常識を覆す課題です。
例えるならエベレスト登山に挑戦するような気持ちで、「やってやる」という想いを抱く反面、不安もありました。
量産品質に仕上げるまでの過程は、ハードとソフトの両面で仕様変更の繰り返し…。しかし、先行技術開発部門と量産開発部門、さらにサプライヤーさんの部品開発にいたるまで、一丸となって多くの課題に取り組んで目標を達成したんです。
これまでにない技術を実現して世に送り出したい。そしてその先にある、お客様が喜ぶ顔を見たい。
開発に携わった多くの担当者の一人ひとりがそういう気持ちで取り組み、チームが一つになれたからこそ実現できたと思うんです。

そもそもターボラグは空気の供給が追いつかずに起こる現象なんですが、突きつめると、アクセル踏み始めの低回転時に充填効率が低いことに原因があります。つまりラグを起こさないためには、低回転時から高い過給圧をかけて高い充填効率にしつつ、中高速域にスムーズにつないで効率よく過給することが必要なのです。
そして誕生したのが、“ワイドレンジ過給技術(ダイナミック・プレッシャー・ターボシステム)”です。

この技術のブレークスルーポイントは、“排気脈動の制御”に着眼したことです。
開発の初期段階に先行技術開発部門の研究員から“排気脈動の制御”について聞かされた時には、「これを実現すればマツダの技術力をよりアピールできる」と、是が非でも実現しようと思いました。
私たち量産開発部門は、先行開発技術を量産品質にまで向上させるのにいつも苦労しているのですが、今回は特に排気脈動を制御する”可変バルブ”の開発には苦心しました。それでも提案した研究員も交えて検討を行った結果、研究段階の性能を低下させることなく、量産品質を備えた可変バルブを開発することができました。

技術内容をざっと紹介しましょう。
まずは4-3-1排気マニフォールドの説明から。他気筒への排気圧力の拡散防止と排気脈動の振幅を大きくする目的で各気筒ごとにポートを独立化し、また容積を極力小さくしています。そしてその中に“可変バルブ”を設定しました。
次に制御内容です。低回転域では可変バルブを閉めて排気ガス経路を絞り、下流のエゼクター機能との相乗効果で排気ガス流速を高めます。そうすると燃焼室内の残留ガスが隣接気筒の高流速の排気ガス流に吸い出され筒内温度が下がります。
吸い出される原理としてはガスバーナーと同じで、高圧ガスが周囲の空気を吸引するところを想像すれば理解していただけるのではないでしょうか。

さらに高流速の排気ガスを勢いよくタービンに当てて過給圧を高め、前述の筒内温度低減との相乗効果で低回転時の高い充填効率を実現しました。
中高速域はバルブを開いて排気経路を拡大し、排気抵抗を低減することで高いタービン効率を得ています。

このように“排気脈動”をうまく利用して充填効率と過給効率の両方を高める仕組みは、世界初※1の技術。これで、長年当たり前とされてきた“ターボラグ”をやっとなくすことができました。
マツダはターボエンジン開発の歴史の中で、排気を最大限に活用できる理想の過給システムを追求し続けてきました。

初めて試乗した際には、低速から湧き上がるトルクと、リニアに続く加速特性に感動し、開発に携わったにも関わらず「これが本当にターボエンジンなのか」と疑ったくらいです。
今回の実現は、過去の挑戦が育んできた技術の蓄積で、ずっとエンジン開発に携わってきたものとして本当に感慨深かったですね。

  1. 2017年11月 マツダ調べ

レギュラーガソリン仕様にもこだわりました。
私も消費者の一人ですから、やっぱり維持費は気になりますし。

もう1つ重要な技術があります。
冒頭に出てきた実用燃費改善の課題、高い圧縮比と低燃費率領域の拡大、この課題を解決する技術です。これを解決しようとすると高い過給圧下でもノッキングを抑制できる耐ノック性改善技術が必要になるのですが、それを実現したのが“クールドEGR”です。

まずEGRシステムとは、燃焼後の排気ガスの一部を不活性ガスとして活用し、それを吸気側に還流するシステムのことで、”クーラーなし”が一般的なのですが、クーラーを追加することでさらに燃焼温度を下げることができます。クールドEGRは”クーラー付”なんです。

クールドEGRで、高い過給圧下を含む中高回転域の燃焼温度を下げて耐ノック性能を向上し、低燃費率領域を中高回転域まで拡大しました。またこのエンジンはレギュラーガソリン仕様ながら高圧縮比10.5(ターボ車の圧縮比は一般的に8~9後半程度)なのですが、これは低回転域の“掃気”の技術と、中高回転域のクールドEGRの技術、両方のブレークスルー技術によって実現しました。

その他、低回転域は4-3-1排気マニフォールド中の可変バルブを閉じて、排気ガスがEGR通路に流れないようにして排気脈動への影響を最小限にし、トルクとレスポンスの悪化を防ぐ工夫も施しています。

もしハイオクを想定していたら、ここまでのノック改善は必要はなかったかもしれません。しかし、実際のお客様の使い方を考え、レギュラーガソリン仕様にこだわりました。
私たちだって消費者ですから、維持費は抑えたいですもんね。

このような画期的なターボエンジンを完成させることができて、私は本当にうれしいんです。
パワートレインの開発に携わってほぼ20年になりますが、試作までやって世の中に出せなかったエンジンなんていうのも、いっぱいありますから。

お客様には、ぜひこのエンジンを搭載したマツダ車で、街乗りから高速道路まで存分に楽しんでもらいたい。
家族や友人たちと一緒に、荷物もたくさん積んで出かけてみてください。もしも、加速がなめらかでターボエンジンらしくない、などと思っていただけたら、これ以上うれしいことはないですね。
加速がイマイチとか、レスポンスが遅いとか、そういったことを一切気にせず、どんなシーンでも余裕をもって思い通りに走れる歓びを、お客様に感じていただけたらと思います。それを届けることこそが、私たちエンジン開発者の使命なのですから。

その他、低回転域は4-3-1排気マニフォールド中の可変バルブを閉じて、排気ガスがEGR通路に流れないようにして排気脈動への影響を最小限にし、トルクとレスポンスの悪化を防ぐ工夫も施しています。

もしハイオクを想定していたら、ここまでのノック改善は必要はなかったかもしれません。しかし、実際のお客様の使い方を考え、レギュラーガソリン仕様にこだわりました。
私たちだって消費者ですから、維持費は抑えたいですもんね。

このような画期的なターボエンジンを完成させることができて、私は本当にうれしいんです。
パワートレインの開発に携わってほぼ20年になりますが、試作までやって世の中に出せなかったエンジンなんていうのも、いっぱいありますから。

お客様には、ぜひこのエンジンを搭載したマツダ車で、街乗りから高速道路まで存分に楽しんでもらいたい。
家族や友人たちと一緒に、荷物もたくさん積んで出かけてみてください。もしも、加速がなめらかでターボエンジンらしくない、などと思っていただけたら、これ以上うれしいことはないですね。
加速がイマイチとか、レスポンスが遅いとか、そういったことを一切気にせず、どんなシーンでも余裕をもって思い通りに走れる歓びを、お客様に感じていただけたらと思います。それを届けることこそが、私たちエンジン開発者の使命なのですから。

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