SKYACTIV-G 2.5T

一瞬のひらめきとあふれる情熱から、
独創のターボは誕生しました。

SKYACTIV-G 2.5Tは、あきらめずに究極を追い求めた執念の賜物。
従来のターボのイメージを一変させる先進のガソリンターボエンジンです。

エンジン開発者 室谷満幸×山形直之

* 本ページに掲載の車両は現在の仕様と一部異なる箇所がございます。

山形
今回のターボエンジンは、実は12年前から着手していたものなんです。開発自体はそこまで時間はかからなかったんですが、搭載予定車との開発のタイミングが合わなかったんですよ。私はマツダの技術研究所でずっとエンジンに関する研究開発を行ってきたのですが、当時の研究所は自分の担当する技術が量産車に採用される確率ってすごく低かったんです。定年までに1つ実用化できれば十分、なんていう世界ですから(笑)。このターボは、私の30年のマツダ人生で初めて世に出すことができた技術なんです。本当に感無量ですね。

私はターボエンジンの開発を長くやっているのですが、だいたい毎回同じところで壁に当たります。それがノッキングです。そのためノッキング対策は必要なんですが、それだけでは不十分で、低速から高速まで気持ちよく加速させようとしたら、幅広い領域で過給することが求められます。それまでは、これらの問題に対してそれぞれで解決策を考えていたのですが、どうにもうまくいかない。ちょっとずつしか改善されず、劇的な進化が生まれないんです。

「これはバラバラにやっていてはダメだ。2つの課題をいっぺんに解決する技術を目指さないとこの問題はクリアできない」ということになり、ノッキング対策と幅広い領域での過給、その両方を同時に実現するというのが、今回のターボエンジンの開発コンセプトになったのです。

固定概念を取り払った先に宝が見えたのです。
そこから不可能を可能にする方法を必死で考えました。

山形
そのコンセプトを実現させるヒントは、すでにあったんです。検討の初期段階で、排気ガスの経路を短くすると過給性能が上がることがわかりました。実際にはエンジンレイアウトの問題で実現は無理と思われるケースなんですが、コンピュータのシミュレーションって現実的でない数値でも試算できるじゃないですか。それで検証を続けると、ある数値を超えると性能が急激に向上するんです。

「ここには宝が眠っているぞ」と思いました。でもそれは実現できればの話です。どうやったら宝を掘り出せるか、つまり普通に考えたら不可能なことをどうすれば可能にできるか、その瞬間から必死に考えるようになりました。

まず頭に浮かんだのは、“流体”の考え方です。流体的な技術はいろんな分野で応用されているので、これを使えば実現できるんじゃないかと思いました。でも、理屈は合っていたとしても、それをどういう仕組みで実現するのか。これを具現化するには、もうひとひねりのアイデアが必要だったのです。

  • CX-8は販売終了しています。

「ここには宝が眠っているぞ」と思いました。でもそれは実現できればの話です。どうやったら宝を掘り出せるか、つまり普通に考えたら不可能なことをどうすれば可能にできるか、その瞬間から必死に考えるようになりました。

まず頭に浮かんだのは、“流体”の考え方です。流体的な技術はいろんな分野で応用されているので、これを使えば実現できるんじゃないかと思いました。でも、理屈は合っていたとしても、それをどういう仕組みで実現するのか。これを具現化するには、もうひとひねりのアイデアが必要だったのです。

  • CX-8は販売終了しています。

頼まれてやったガスコンロ掃除。そこからひらめいたアイデア。
それが世界初※1の技術になったんです。

山形
今回のターボシステムには、排出ガスの流れを整える特別な部品が設置されています。流体を応用した技術のひとつで、この中にノズルを入れるんですが、通常は1つしか入りません。しかし偶然、この部品を改良する画期的なアイデアを思いついたんです。

ある日、私は家で妻からガスコンロの掃除を頼まれました。掃除をしながら、なにげなくガスコンロの空気導入口を眺めていると、突然ひらめいたんです。排出ガスの流れを整える部品にノズルを3つ入れて横並びにすれば、理想的な流体現象が起きるんじゃないかって。すぐにシミュレーションすると、十分な性能を発揮することがわかりました。今回のターボシステムの重要な新技術は、こうして誕生しました。まさか家でのガスコンロ掃除が、世界初※1の技術につながるとは夢にも思いませんでした(笑)。

こうして開発されたターボシステムですが、搭載予定車との開発とタイミングが合わず、しばらくお蔵入りとなってしまったのです。CX-9の開発の際に量産開発部門の室谷さんから声をかけてもらった時は、本当に救われたと思いました。それと同時に、この技術が色褪せることなく最新のターボ技術として世に出せたことが、心底うれしかったです。本当に何とか間に合った、という感じですね。

これは想像ですが、他社も同じ理屈を考えることはできても、それをカタチにするのは難しかったんじゃないかと思います。不可能だとすぐにあきらめるのではなく、実現するためのアイデアを粘り強く考えることがやっぱり大事なんです。マツダには、そういう姿勢を貫き通す文化というか、貫くのが当然という独特の空気があるように思います。それが結果として、これまでにないターボエンジンの実用化につなげることができたのだと思います。

  1. 2017年11月 マツダ調べ

これは想像ですが、他社も同じ理屈を考えることはできても、それをカタチにするのは難しかったんじゃないかと思います。不可能だとすぐにあきらめるのではなく、実現するためのアイデアを粘り強く考えることがやっぱり大事なんです。マツダには、そういう姿勢を貫き通す文化というか、貫くのが当然という独特の空気があるように思います。それが結果として、これまでにないターボエンジンの実用化につなげることができたのだと思います。

  1. 2017年11月 マツダ調べ

室谷
私はこのターボエンジンの量産開発に携わったのですが、スタートしたのは2011年ごろですね。その当時マツダには、“無駄な過給はしない、適切な過給をする”というターボの考え方があって、それを実現させるための重要な技術が、先ほどの山形さんが考えた“ダイナミック・プレッシャー・ターボシステム”なんです。

最初にこの技術の話を聞いた時は、「排気にバルブをつけるなんて変なこと考える人がいるなあ」という印象でした(笑)。だって考えてもみてください。エンジンから出た直後の排気って1000℃近くあるんですよ。そんな超高温の中でバルブを正確に動かそうなんて、普通じゃありえないじゃないですか。

でも、シミュレーション上では過給性能が劇的に上がることがわかっている。ターボラグもない。まさに“人馬一体”のレスポンスです。「マツダが本気でターボをやるなら、ここを目指さないでどうする」、そんな想いがこみ上げてきました。本当に実現可能か、その時はまだ確証をもてずにいましたが、これまでにない画期的なターボエンジンを開発するため、この難題にチャレンジすることになったのです。

乗り越えても乗り越えても新たな壁が現れ・・・
最後の力は全員の責任感でした。

室谷
大変だったのは、やはり耐久性です。技術開発段階で試作したエンジンは、性能テスト中に一部部品が壊れてしまったこともありました。でも性能的には想定通りの数値を達成していたんです。逆にいえば、耐久性さえクリアできれば、このターボはいけるぞと思いました。

そこからは構造の見直しや材料の選定、熱の影響を受け難い形状にできないか、この部品の構造は変えられないから耐熱材でカバーしよう、などとあらゆる可能性を探りながら耐久性の確保を追求しました。課題は、超高温下での正しい稼働でした。シミュレーションで何度も解析を繰り返しては、形状を変えたり、スリットを入れたり、さまざまなトライを重ねて信頼性を上げていきました。最終的にはジェットエンジンでも使用される耐熱材料を採用するところまでいきました。

でも、これで終わりとはなりません。信頼性を確保して課題をクリアした形状や構造にすると、当初想定していたレスポンスが少し落ちてしまったんです。これを解決するため、さらに形状の改良を重ねていく。こういう修正を繰り返しました。そして実際の車両に搭載してテストする段階になると、走行状況によるさまざまな負荷によって想定通りのレスポンスが発揮されない場面が出てきました。当初の狙い通りのレスポンスを実現するには、もう一段階高いレベルの目標値を設定しなければならないことがわかったのです。

ここまでくると、もう責任感だけですね。自分たちが目標をクリアしなければ、量産の次のステップに進めない。何としても目標を達成しよう。幸いにしてこの挑戦は、私一人でやっているわけではないんです。一緒にがんばっている仲間がいる。協力してくれるサプライヤさんもいる。目標を明確にしてみんなで共有すれば、いろんなところからアイデアが出てくる。そうやって文字通り一丸となって開発に取り組むことで、さらに高くなった目標値を何とかクリアすることができました。量産開発に関わるありとあらゆる人たちの力が結集して、最初は夢物語のようだったターボエンジンを実現させることができたのです。

ここまでくると、もう責任感だけですね。自分たちが目標をクリアしなければ、量産の次のステップに進めない。何としても目標を達成しよう。幸いにしてこの挑戦は、私一人でやっているわけではないんです。一緒にがんばっている仲間がいる。協力してくれるサプライヤさんもいる。目標を明確にしてみんなで共有すれば、いろんなところからアイデアが出てくる。そうやって文字通り一丸となって開発に取り組むことで、さらに高くなった目標値を何とかクリアすることができました。量産開発に関わるありとあらゆる人たちの力が結集して、最初は夢物語のようだったターボエンジンを実現させることができたのです。

「水中で足をかく白鳥」のイメージ。
ターボエンジンで実現した“人馬一体”の走りを、
ぜひ体感してほしいですね。

室谷
こうして完成した新しいエンジンなので、お客様にはまずは乗っていただきたい。マツダの目指す“意のままの走り”や“人馬一体”を表現するターボエンジンになっていることを、ぜひ体感してほしいですね。さらに独特の加速感も味わっていただきたい。ゼロ発進もそうですし、高速での追い抜きもそう。まるで4LクラスのNAエンジンのような加速に驚くはずです。高回転域からも、さらにもう一段伸びていく。もはやターボの域を超えていることを実感できると思います。

山形
私は研究者の立場から、やるからには常に究極を目指そうと思ってきました。ターボエンジン全体としては、まだまだ改善の余地はあります。でも、今回の流体を応用した“排気脈動”による技術としては、これは究極です。簡単にいうと、波の数が少ないほど過給性能が向上します。普通はエンジンから4つの波が出るんですが、かつてのRX-7のツインスクロールターボで波を2つにし、今回のターボシステムで1つにしました。これ以上先がない。そういう意味で、究極なんです。理論的にはやり尽くしたといっていいと思います。研究者としては本当に幸せです。でもこれは、エンジンの要素の1つだけを極めたにすぎません。これからも、何か別の要素の“究極”を手がけてみたいと思いますね。

室谷
今回のエンジンは、本当に達成感がありますね。これまでにないターボエンジンを完成できたことを、心からうれしく思います。まるで白鳥のように、静かに上質に、意のままに走るクルマ。そのエンジンフードの下では、白鳥が懸命に水かきをしているように、私たちのターボが一生懸命バルブを動かしているわけです(笑)。世界のどこにもないエンジンを完成させたことを、本当に誇りに思います。

室谷
今回のエンジンは、本当に達成感がありますね。これまでにないターボエンジンを完成できたことを、心からうれしく思います。まるで白鳥のように、静かに上質に、意のままに走るクルマ。そのエンジンフードの下では、白鳥が懸命に水かきをしているように、私たちのターボが一生懸命バルブを動かしているわけです(笑)。世界のどこにもないエンジンを完成させたことを、本当に誇りに思います。

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