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「所詮 カーオーディオ」を乗り越え、クルマを極上のコンサートホールへ


9月5日、マツダミュージアムでは土曜日開館イベントとして、「MAZDAのオーディオ開発秘話とそこにかける思い」をテーマにしたトークショーを行いました。
今回は、音響エンジニアによる講演内容と、実際にカーオーディオ試聴体験をされたお客さまのご感想をご紹介します。
また記事の最後には、MAZDA3・CX-30・CX-60・MX-30でお楽しみいただける「Mazda Harmonic Acoustics(マツダ ハーモニック アコースティックス)」のオーディオ設定方法を掲載しています。ぜひ皆さんの愛車でも試してみてください。

1. 「音」マニアの二人だからできた~開発者のプロフィール~

今回の講演を担当した手島マネージャー、若松主幹エンジニアの二人は年代こそ違うものの、音楽やカーオーディオへのこだわりぶりが共通しています。「Mazda Harmonic Acoustics」のオーディオシステム設計思想をより皆様にご理解いただくために、まずは二人の個性豊かなプロフィールからご覧ください。

ラジオ少年~アマチュア無線から音の世界へ~手島由裕マネージャー

オーディオとの関わりの原点は中高生の頃。その頃は、海外短波ラジオ放送を聴いて放送局とコミュニケーションを取るいわゆるBCL*ブームが全盛で、FM放送を毎日エアチェックするヘビーリスナーからオーディオの世界に入る。大学時代は自分でも電波を発信したくなり、アマチュア無線にはまる。卒業研究のテーマには大気観測用レーダーのデータ解析を選んだ。

1989年マツダに入社。電波、オーディオに関わる仕事を希望して、アンテナから電波を受けてそれをチューナーから音や映像にする音響制御の仕事を担当。

  • BCL: Broadcast Listeningの略。主に短波を用いて行われる海外からの放送を受信すること

いつもそばには「カーオーディオ」があった…若松功二主幹エンジニア

幼少時代、クルマでの移動が多く、親がオーディオ好きのため、クルマで音楽を聴くのが当たり前の生活。やがて洋楽に興味を持ち、USヒットチャート番組をVHS録画。そこから音声を取り出してMDに録音してクルマで再生して楽しんでいた。
ある日、MDとCDの音質の違いに驚き、また友人のカーオーディオの音響の世界観に圧倒されて、以後カーオーディオにのめり込む。大学時代はバイト代をすべて中古オーディオ機材のネットオークションにつぎ込み、DIYで取り付け。クルマで10分の通学路なのになぜか1時間30分もかかってしまう…。
ドライブをしながら音楽を聴くことが好きすぎて、就職先はオーディオメーカーではなく地元のマツダを選択。新入社員の研修中に試聴室を発見し、「自分が行くのはここしかない」とマネジメントの方に猛アピール。熱願がかなって無事オーディオ関連の部署に配属された。

こんな二人が強力なタッグを組んで2019年に構築したのが、「Mazda Harmonic Acoustics」。
今もさらに進化を続けるこのオーディオシステムの開発ストーリーを二人が熱く語ります。

2. カーオーディオの変なところ~所詮、クルマだから~

皆さんは、所詮(しょせん)クルマのオーディオなんてと思っていませんか?その通り、「所詮」なんです。
というのも、クルマの中ではまともな音が出せない4つの要因があるからです。
一つ目はクルマの中で大きな音を鳴らすと、車内に多くある可動物が振動によってカタカタ音を出してしまうということ。

二つ目はスピーカーの配置場所が限られていること。ホームオーディオの場合は、自由度が結構ありますが、クルマは自分が乗り込むと、自由にできるスペースが限られるのです。

三つ目は、オーディオ音源はそもそも録音の段階からスピーカー間の真ん中に座って聴くのを前提に作られますが、残念ながらクルマではシートは真ん中には無く、必ずスピーカーとずれて座らざるを得ないこと。

最後にクルマは容積が限られていて、置き場所が決まっている部品も多いので、狭い空間の中でスピーカーを置く場所は制約が大きいこと。このようにクルマは音を聴くには厳しい環境であり、「所詮クルマ」と言われるのも仕方のないことだったのです。

このようなクルマというオーディオとして厳しい音環境の中で、カーオーディオの設計は「ここが変だよ」という部分がいくつも生まれました。
その一つは音の大きさの制約です。クルマの走行時は、ロードノイズや風切り音でそれより小さい音が聴こえなくなります。一方で音の大きさを上げて行くと、ドアからラトル(クルマの中でいろんな物が鳴ること)が発生するため、音を出す範囲を絞らざるを得ず、コンサート、ライブの生音が再現できないとされていました。

上図で「封印」と書かれている部分の音域(コンサート・ライブのような音)が、これまでは再現できなかった。

二つ目は、主にスピーカーの音を直接聴くホームオーディオとは違って、マツダの一世代前のクルマではインパネの上に中高域用スピーカーが置かれ、フロントガラスにぶつかりその反射する音をメインに聴かざるを得なかったことです。

私たちはスピーカーから直接音を聴くことができず、窓ガラスに反射した音を聴いている。

さらに左右のスピーカーが人に対してずれているため、先行音効果で自分に近い方のスピーカーから音が出ているように感じてしまうこと。そして、 これまでフロントドアに置かれた低域用のスピーカーは再生効率が悪く、異音が発生しやすい場所にあること。
これらが今までのカーオーディオの良くないところでした。

カーオーディオでは、スピーカーに対して左右対称に座ることができず、左右のスピーカーとの距離差は数十cmにもなる。 人は0.1msec=3.4㎝の時間差すら人は聴き分けられると言われており、どうしても自席に近いスピーカーから音が出ているように聴こえてしまう。

3. クルマを極上のプライベート・コンサートホールにするために

このような音環境を改善するために、MAZDA3以降の新商品群(商品改良車除く)では次のようなことを目指しました。

・音源を妥協なく正しく再生する

・再生帯域を広く、ダイナミックレンジ*を広く

・大音響でも異音を発生させない

音源の正しい再生という点では、できるだけ素直に音を出せるようなシステムを作ろうと開発棟の中に試聴室を設置。録音スタジオで聴く音をイメージして、スピーカーを並べてCDを聴き、アーティストの考えている音を知った上で、クルマで確認するという手法を取っています。

  • ダイナミックレンジ:最も強い音と最も弱い音の範囲をdB(デシベル)で表したもの

マツダ社内にある試聴室。この部屋で、理想の音を聴き、自分自身の感性を正しくリセットするという。

再生帯域を広げるという点では、スピーカーを低、中、高域それぞれに適した口径を見つけ出して設置。また、音の輪郭やClarity(明瞭さ)に影響のある音の帯域を再生するスピーカーをドア上部に設置し、直接音が届くように配置しました。さらに、音の直進性が増す高い帯域を受け持つツイーターを乗員の方へ角度をつけて配置するなど帯域を広げました。

当時の検証風景(左)と、実際に完成したスピーカーレイアウト(右)

またMAZDA3以降の新世代商品群では、車両のレイアウトの変更により、ドアではなくカウルサイドというボディ側に低域のスピーカーが取り付けられるようになりました。ドアより強度の強い場所に専用BOXと一緒に取り付けることで、異音の防止にもつながりました。

先ほど「ここが変だよ」のところで、クルマでは「人がスピーカーに対してオフセットしている(ずれて座っている)」と言いましたが、新世代商品群のクルマ(MAZDA3・CX-30・CX-60・MX-30)では「リスニングポジション」という機能を追加しました。

「Mazda Harmonic Acoustics」搭載車には8つのスピーカーが付いていますが、運転席モードにすれば、同じ時間ですべてのスピーカーで個別に時間差をつけて音を鳴らして、最後同時に耳に届くようにしました。そうすることで、例えば近いスピーカーに貼り付いていたボーカルの声の位置が、フロントの中央の位置に浮き出てくるように感じられるなど、まるでホームオーディオで聴いているような感覚に近い音を鳴らすことができるようになりました。

私たちはスピーカーから直接音を聴くことができず、窓ガラスに反射した音を聴いている。

このような改善により、大好きなミュージシャンが、あたかも目の前で自分のためだけにライブしてくれているかのようなライブ空間を創ることができました。クルマを極上のプライベートなライブ・コンサートホールにすることができたのです。

4. 「カーライフを通じた人生の輝き」を提供するために

自動車メーカーであるマツダがどうしてここまで音響にこだわるのか?
その答えは、「カーライフを通じて人生の輝きを人々に提供する」という私たちマツダのコーポレートビジョンにあります。

お客様に車室内の空間にいる時も楽しんでもらうことを考えた時、クルマで音楽を聴くというシーンは絶対に外せません。さらに音楽には無限の可能性があると言われているように、これからどんな音楽が生まれてくるのか、私たちにも予想できません。今まで聴いたこともない音楽が突然生まれることだってあるでしょう。

コンテンツとしての音楽は、これからも永遠に続いて行くものだということも考えて、クルマの価値の一つとしてしっかりと時代が求める音響システムを作り込んでいきたい。そんな思いでこれからも頑張っていきたいと思っています。

5. お客様からのご質問と体感いただいた方のご感想

当日トークショーにご参加いただいた方からの質問と、
講演終了後に行ったカーオーディオ試聴体験の感想をご紹介します。

Q.テストで聴いている音楽はどんなジャンルの音楽ですか?

A. できるだけ幅広いジャンルの音楽を聴くようにしています。
その理由は、自分の好みになってはいけないということが一つ。もう一つは、お客さまがいろんなジャンルを聴くことを想定しているので、その音源でチューニングするというよりは、その音源をもとに周波数特性や、時間軸を基本的には試聴室のようにナチュラルに聴けるように、自分が判断できるように音源を使っています。その曲に合わせたチューニングをしている、ということではないですね。

Q.「いい音」というのは人によって差がありますが、その定量化は行っているのでしょうか?

A. これまでもいろんな方と話をしていますが、何が難しいかというと測定結果はあくまでも人間の耳に入るところだけの数値で、人間はその後今までの体験を元に頭の中で音を作り上げていきます。そのため数値化が困難となっています。だからこそオーディオメーカーがたくさん存在し、その人の好みで選ばれているんですね。

そういう意味で言うと、あまり色付けをしない、かつ周波数特性が暴れないような味付けを今は目指しています。音源を踏まえての情報を正しく再生しようとしているのです。そうした上で、お客さまの好みに対してはbass(低域音)やtreble(高域音)の調節で好みのところにチューニングできるような機能を持たせています。

オーディオ試聴体験のご感想

「全席モードの時点で、自分が乗っているクルマよりも音の粒の細かさや音質が良いと感じました。運転席モードでは、明らかに音の定位感、どこにあるかというのがわかりました。スピーカーの制御でここまで音の印象を変えることができるのかと驚きました」 (20代男性)

「ふだんは、走りにこだわってロードスターに乗っています。オープンで路面の音、エンジンの音などを楽しんできましたが、やはりこれは別世界。オーディオルームで聴くよりずっと良い感じ。説明では、マツダ独特の走りを楽しむ時はエンジン音が聴こえるようにもできるとのことで、音と走りの両立がよく考えられていると思いました」(60代男性)

「私は音響に関しては素人なのでわかるかなと思っていたのですが、ドライバーズモードで音楽を聴いてみてびっくりしました。これを家族4人で聴けたらなと思いました」(40代女性)

6. 「Mazda Harmonic Acoustics」設定方法のご紹介

講演の内容にも出てきた「Mazda Harmonic Acoustics」は、2019年に発売したMAZDA3をはじめ、CX-30・CX-60・MX-30に装備しています。
ここでは、より臨場感のある音を楽しめる「運転席モード」をご紹介しますので、ぜひ試してみてください。

「運転席モード」とは?
各スピーカーから音が出るタイミングを調節することで、運転席に座っている人に対して左右のスピーカーから同時に音が届くような設定です。
音に包まれたかのような感覚で、より臨場感のある音楽空間を楽しむことができます。

設定方法

以下のマツダコネクト画面遷移に沿って、設定いただけます。

1.ホームボタン(家マーク)を押し、ホーム画面を表示
2.「設定」
3.「サウンド」
4.「音響設定」
5.「リスニングポジション」
6.「運転席」or「全席」を選択

カスタマイズ完了

  • Bose Centerpointを調整するとリスニングポジションを選択できません。設定するときは、Bose CenterpointをOFFしてください。

今回は「Mazda Harmonic Acoustics」の開発ストーリーを中心にご紹介しました。ここで触れた「運転席モード」や「カウルサイドの低音域スピーカー」は、実際に試乗して聴いていただくと、その当の迫力をご理解いただけます。

ご自身の愛車に設定のある方は、上記の設定方法をご確認いただき、ぜひ試してみてください。
また、MAZDAの販売店のショールームでもご体感いただけますので、お近くの販売店にお問合せください。