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安全・技術

厳しい騒音規制でも妥協しない。ロードスターのリアルなエンジンサウンドを追い求めて


「クルマに乗りエンジンをかけた瞬間、聞こえてくるエンジンサウンドに心躍る」
「高速道路や郊外の走行でアクセルの踏み込みに応えてくれるエンジンサウンドを聞き、気持ちよくなる」
「運転していなくてもクルマに乗っているだけで走行状況に合わせてエンジンサウンドが変化し、胸がどきどきする」

皆様は、こんな経験をしたことはありませんか。
昨今、騒音規制が厳しくなり「数年後には車外に向けてエンジンサウンドが出せなくなる」とも言われています。その中でも今回の記事では、ロードスターという内燃機関を搭載するスポーツカーが持つ本来の魅力を、最大限お客様に感じていただくために行ったエンジンサウンド改良の内容をお伝えします。
既にロードスターにお乗りいただいている方はもちろん、「ロードスターって名前くらいは聞いたことあるけど…」という方でもお楽しみいただけます。また、実際にお乗りいただく際の体感ポイントも掲載していますのでぜひご確認ください。

1.年々厳しくなる騒音規制を遵守し、走る歓びを追い求める

昨今の排ガス規制や電動化の流れによる自動車をとりまく環境の変化は皆様もご存じかと思いますが、私たち一人ひとりにとってより豊かな社会を実現するために、実はクルマが車外に出す音の規制も年々強化されています。
このような状況においても、マツダは2030年に向けたビジョンとして『「走る歓び」で移動体験の感動を量産するクルマ好きの会社になる』ことを掲げています。その中でもロードスターはマツダを代表する象徴的な存在です。だからこそ、今回のロードスターのエンジンサウンド改良は厳しい騒音規制を遵守しながらも、内燃機関を搭載したスポーツカーとしての走る歓びをより深く感じていただくことを目的に取り組みました。

2.ロードスター初心者の筆者が実際に乗り比べてみた

入社してからの7年間一貫して国内営業部門に所属し、開発領域は当然未経験。さらにロードスターを所有したことはなく乗ったのも数回程度という筆者が、実際にエンジンサウンド改良前後のロードスターを乗り比べてみました。

今回試乗したロードスターと開発担当者の阿草さん

感じ方は人それぞれなので一概に「こんなにも違います!」と断言はできませんが、「明らかに違うな」と感じられました。

感覚的な表現になりますが改良前に乗った際のサウンドの聞こえ方は、「アクセルを踏んだあとに、エンジンサウンドがじわりじわりと耳から聞こえてくる」という印象でした。端的に言うと「スローに、耳から」です。
一方で改良後に乗った際のサウンドの感じ方は「アクセルを踏んだ直後から、エンジンサウンドが車内の空間全体を通してリアルタイムに全身で体感できる」でした。「リアルタイムに、全身で」です。

車外へのエンジン音が抑えられている中でも、アクセルの踏み込みに合わせたリアルなエンジンサウンドの変化を感じることができるのはなぜだろう?という疑問が浮かびました。

  • サウンドの大きさというよりもアクセルの踏み込みに応えるようにサウンドが聞こえてくる、という点がポイントです。

では、実際にどのような改良を行ったのでしょうか。ロードスター初心者の筆者でも違いが感じられる今回のサウンド改良内容を、開発担当者の阿草さんに聞いてきました。

3.100均の商品を使った試作からスタートし商品化を実現

はじめに、今回行ったエンジンサウンド改良のポイントをお伝えすると以下3つです。

ロードスターのエンジンルーム写真。赤枠で囲んだ3か所が今回のサウンド改良のポイント3点

①フレッシュエアダクトで発生し直接ドライバーに届く音を調整・強化

②エアクリーナー下部に開口部(穴)を新設しエアクリーナーで発生する音を調整・強化

③エンジンの吸気から発生する原音を車内に直接取り入れるインダクションサウンドエンハンサー(Induction Sound Enhancer:以下ISE)という部品をマツダオリジナルの構造に変更し、ドライバーに届く音を強化

これら3つを実現することで、豊かな三重奏を乗員に届けられるのではないかと考えました。その中でも今回は、①②で取り入れた吸気音を乗員に直接届ける要となる③の開発背景をご紹介します。

  • 記事公開日時点で販売しているロードスターにつき①及び②は全グレード標準装備ですが、③はロードスター「RS」/ロードスターRF「RS」のみ標準装備、その他グレードはショップオプションとなります。
  • ①②は2024年1月発売のロードスターより標準装備となっています。

では、そもそもなぜ今回の商品改良を行うことになったのか、開発担当者である阿草さんにお話を聞きました。

なぜ今回のエンジンサウンド改良を行おうと考えたのでしょうか?

阿草:きっかけの一つは、冒頭にもお伝えした騒音規制が厳しくなっているという外部要因によるものです。そしてもう一つは、マツダ社内で行われていたプロジェクトです。開発当時、部門横断で理想のクルマづくりを考えるプロジェクトが行われており、さまざまな開発部門のメンバーと役割や立場を超えて「こんなクルマ、こんなエンジンサウンドだったら良いよね」というありたい姿を議論しました。その中で、「クルマの中でも特にスポーツカーは、アクセル操作にあった音がリアルに届くことが乗員の気持ちを高めるために重要だ」ということに気づきました。振り返るとここが出発点だったように思います。

理想のクルマづくりを考えるプロジェクトがあったなんて初耳でした。理想のサウンドと厳しい騒音規制のクリアについてはどのように考えたのですか?

阿草:そうですね。理想のサウンドを実現したいと思っても、騒音規制をクリアしなければそれは実現できない。どうすればそれらを両立できるか考えたときに、「車外に音を出せないなら、リアルなエンジンの吸気音をいかに車室(特に運転者)に届けるか」という方向で検討しようと思いました。

なるほど!車外に音が出せないなら、車内で響かせるということですね。ではアイデアを練る、カタチにするために次はどのようなことをされましたか?

阿草:カタチにするための試行錯誤の日々が始まりましたね(笑)。ISEの部品や構造を検討する目的で子どものジャングルジムのフレームパーツをカットしてみたり、100円ショップに行くたびに何か使えそうなものはないかを探して試したり…、身の回りにあるさまざまなものを活用しながら手作りで試作品を作製しました。

※試作当初の手製の管の写真

100円ショップ、毎週行っています(笑)。私たちの生活の中にあるものからクルマの部品のアイデアが広がっていくなんて、なんだかワクワクしますね。試行錯誤のなかで検討はスムーズにいったのでしょうか?

阿草:もちろん課題は山積みでした。中でも特に、1. エンジンの吸入空気(ガス)を漏らさないこと、2. エンジン吸気の良い音を車内に届けること、の2つが大きな課題でした。課題解決のために、ISEの管の形状や径(円の長さ)、素材、そして管と管の接合部にある膜の素材や厚み、膜表面の穴のパターンと、何度も検討しました。試作開始から実際の商品化の完了まで実に1年以上の時間がかかりました。

上段:膜の素材や厚み、膜表面の穴のパターンを3Dプリンターを用いて何度も試作した写真  下段:完成品のインダクションエンハンサーの写真

なるほど、開発においては短い期間かもしれませんが、実際に携わっていると長く感じますよね。大きな理想を描くところだけで終わらず地道に検討を繰り返すことで、先ほど私が体感したようなリアルなサウンドが実現したんですね。最後に、改めて今回のサウンド改良を振り返ってみていかがですか?

阿草:手加工で作製した装置が量産車の装置になるまでの過程は、狙った性能が得られなかったり、新たな課題が発生したり、一人で考えていると何度も量産化を諦めそうになることがありました。そのたびに協力メンバーの皆さんが業務の役割を超えて声かけやアドバイスをしてくださり、量産化にこぎ着けることができました。このことは、自分たちが信じる“良いクルマ”をお客様に届けたいという目標を共有できているマツダの仲間の力であり、モノづくりの大きな力になると感じています。

4.開発担当者が直伝!リアルなエンジンサウンド体感のチェックポイント3点

まず、現在マツダの販売店で取り扱っているロードスターの新車はサウンド改良後のクルマであるため、新旧の乗り比べは難しいかもしれません(すみません・・)。そんな中でも、改良後のロードスターにお乗りいただいた際にご活用いただきたい、リアルなエンジンサウンド体感のチェックポイント3点を阿草さんに聞きました。

①エンジンの始動、エンジンの調子を探る空ぶかし、ブリッピングの際、空気の流れや燃焼していることが音の変化により素直に感じ取れる点(①はロードスターに乗りなれているお客様向け)

②3速で走行しているときに、いつもの加速時よりアクセルをぐっと踏み込むことで(高負荷・高回転)、エンジンサウンドからスポーツカーらしい高揚感が感じられる点

③街乗りから郊外・高速道路走行まで(低回転から高回転)、一貫してアクセルの踏み込み具合に合わせた反応があり加速をしてくれるので、自分の思い通りの気持ちいい走りができる点

上記はあくまでも参考となりますのであまり意識しすぎず、ロードスターとのドライブを素直にお楽しみいただくことで自然とリアルなサウンドを感じていただけると思います。

まとめ

今後電動化や騒音規制が進む中でも今回ご紹介したエンジンサウンド改良のように、マツダはお客様一人ひとりの「走る歓び」そして「生きる歓び」の実現に向け歩みを進めてまいります。なお、今回掲載したインダクションサウンドエンハンサー(ISE)は以下ロードスターの商品サイト内にも掲載しておりますので、もしご興味がありましたらご確認ください。

  • 本記事に掲載している改良前後の乗り比べにおける感想や実際の体感ポイントはあくまでも参考情報になります。感じ方には個人差がある旨ご了承ください。
  • 社外品のマフラー等を装着している場合は、社外品等未装着の純正ロードスターと比べて本記事に掲載しているエンジンサウンドが体感しづらい場合がございます。