広大な面積を誇る米国のニューメキシコ州では、様々な自然の驚異に出会うことができる。
この州のユニークなところは、大自然とは対極的な「未知」の断片を目の当たりにできること。
マツダのコンパクトクロスオーバーCX-30に乗り込んで、ニューメキシコ州独自の魅力を探索した。

Story by Jack Baruth, Photography by Mark Skovorodko

米国の全50州の内、ニューメキシコは5番目に面積が大きい州だ。

州の一部はアメリカ先住民のナバホ族のもので、一部は人類初の原子爆弾実験に使用され、そして一部では人類が初めてエイリアンと遭遇した場所とまことしやかに言われている。訪れる人に不思議な心理感覚をもたらす場所だ。

 

ニューメキシコ州の歴史は長く、美しい自然と謎が混在する。

平均標高は、隣接するコロラド州の「標高1マイル(約1,600メートル)の街」、デンバーにある国際空港よりも高く、州のほとんどが自然保護区となっている。

その昔、アメリカン・ドリームという名の一攫千金を狙って西へと向かった東部の金鉱夫たちにとっては、魅力的ではなかったようだ。

  • エレファント・ビュート・ダムと貯水池は、かつて世界最大の灌漑用ダムだった
  • エレファント・ビュート・ダムと貯水池は、かつて世界最大の灌漑用ダムだった

   

今回の旅の目的は、マツダのCX-30を走らせてニューメキシコ州の自然に触れ、そのついでに歴史に触れること。周囲には何もなく、これといった特徴もない砂漠の街、ロズウェルを訪れ、なぜここが「未知との遭遇」現場となったのかも知りたかった。

人口こそ少ないが、アメリカ屈指の面積を誇る州

色々な意味で「スペース」を求める人にとって、ニューメキシコは間違いなく魅力的な州だ。州の人口はニューヨークのクイーンズやブルックリンよりも少ないが、両方の区を合わせた面積の850倍強の面積を有している。

最も人口が多い都市、アルバカーキですら、朝食をとれるレストランはニューメキシコ大学のキャンパスの向かいにあるフロンティア・レストラン1軒だけだ。

 

このエリアから数マイル離れたところには、1706年に設立されたオールド・タウン地区がある。ここには古い建物や地区設立以来の歴史が大切に保存されている。

ほぼ原形を残している建物は砂、粘土、麦わらを原料とした煉瓦を組み立てたアドビ建築で、漆喰の外装と木材の梁出し天井が特徴的だ。

ニューメキシコ州最大の都市から南下し、昔はホット・スプリングスとして知られていた都市へと向かう。1950年3月31日、ホット・スプリングスは当時人気があったNBCのラジオクイズ番組名、トゥルース・アンド・コンセクエンセスへと改名した(NBCは、アメリカ3大放送ネットワークの1つ)。

クイズ番組の司会者、ラルフ・エドワーズは「番組名を正式名称とした都市から番組をオンエアする」と公言していた。この話を聞きつけたホット・スプリングスの政治家達はすぐに行動に移し、都市名を番組名に変更した。感激したエドワーズは、1999年まで毎年必ず「ティーアーシー」(T-or-C)を訪れたそうだ。

 

市民がティーアーシーと呼ぶこの都市は1916年、リオグランデ川にエレファント・ビュート貯水池を建設するために作られたダムのために存在する。

1960年代までは世界最大の灌漑用ダムであり、現在もこの地域に電力と水を供給し続けている。見た目が休んでいる象を思わせるエレファント・ビュートは、ダムの背後にある湖に浮かぶ島だ。

文明を置き去りにした一面砂漠のホワイトサンズ

ホワイトサンズ国定公園は、ティーアーシーからちょっと走ったところにある。

不要な程に車線が多い高速道路を走りながら地図に目をやると、国定公園の真下にはメキシコのファレスがある。

この地域は米国とメキシコ間貿易の中心地であり、いたるところに税関がある。ニューメキシコの名産品、ニューメキシコ・チリ(唐辛子)の畑があることで有名なハッチを通り過ぎ、ラスクルーセスを左折するとすぐに国定公園がある。

ちなみに地元では、ラスクルーセスという都市が長年に渡り貿易が交差する場所であったことに敬意を表して、スペイン語で交差点を意味する「クルーセス」と呼ばれている。

 

ホワイトサンズで純白の砂漠の中心に立つと、文明が遠のいていくような感覚を覚える。砂の上に残された足跡は、夜のうちに強風によって消されてしまう。石膏が平地を覆うようにして溜まり、乾燥して結晶となった後に風化し、砂状に粉砕されて出来上がった275平方マイル(約442平方メートル)の白い砂が見渡す限り広がっている。

  • 様々なインスピレーションの源となった、不気味なホワイトサンズの風景

   

ここではイギリス人アーティスト、デヴィッド・ボウイの初主演映画『地球に落ちてきた男』や『トランスフォーマー』シリーズが撮影されたそうだ。またアメリカ空軍のミサイル実験が行われるため、時々閉鎖される。

地域住民から反対の声が上がっていると思いきや、コード名トリニティとして知られる人類最初の核実験を覚えている住民にしてみれば、さほど気にならないようだ。

 

我々がホワイトサンズを訪れた日、幸いにも空にはミサイルが飛んでいなかった。周囲を見渡すと、そりに乗って楽しそうに砂丘を滑り降りる数家族が目に入った。地面に突き刺さった複数のポールは、砂漠に足を踏み入れてハイキングやキャンプを楽しむ人の目印となっている。

そこまでの勇気がない人向けに、国定公園内には砂をどけて作られた臨時駐車場が点在する。各駐車場には、日よけが固定された未来的なデザインのアルミ製ピクニックテーブルが用意されている。


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