ロズウェル事件のはじまりと正体

ホワイトサンズからロズウェルに向かうルートは2つある。国道70号線でルイドソ・ダウンズを抜けるのがシンプルなルートだ。

ここには全米クオーターホース2歳馬競走が行われるルイドソ・ダウンズ競馬場がある。競馬場で最大の開催となるこのレースは総賞金300万ドル、優勝馬にはその半分の150万ドルの賞金が保証されている。クオーターホース競馬の関係者にとってはビジネスと名誉、両方の意味で重要なタイトルだ。

クオーターホースの代わりに、スノーフレークホワイトパールマイカのCX-30を駆って、我々はクラウドクラフトという村を抜ける標高の高い第2のルートを走ることにした。

リンカーン国立森林公園にある、この小さな村の標高は8,500フィート(約2,590メートル)。冬はスキー客が訪れ、冬以外の季節は砂漠の暑さから逃れるには絶好の場所だ。

 

森林公園に向かう道の数は1,000本ほどで、道はアップダウンがあり、トタン屋根の小屋から広大な屋敷まで、様々な大きさの建物が時折視界に入ってくる。この地域の道はほとんどが舗装されていないため、数分走っているとすぐに舗装された道路は無くなってしまう。

   

  • UFOマニアを暖かく迎え入れるロズウェルは、1950年にエイリアンが墜落したと言われる場所

ロズウェルに入ると、エイリアンが描かれた看板が我々を迎えてくれた。

UFOの形をしたマクドナルドから閑散としたダウンタウンでTシャツを販売する店に至るまで、この都市では様々な形でエイリアンに遭遇することができる。

今から73年前、アメリカ空軍はモーグル計画と呼ばれた、旧ソビエト軍の核実験の音波を探知する高高度気球を飛ばす極秘ミッションをロズウェルで行っていた。

複数の気球の内の1つが墜落し、地元の農家がその残骸を空軍基地に届けに来た。光沢のある不思議な部品を見た空軍の司令官はそれを「エイリアンの円盤」と呼び、これがロズウェル事件の始まりとなった。

   

というのがまことしやかに言われている。

ロズウェルのメイン・ストリートにあるロズウェル国際UFO博物館では、展示を通じてUFOは本物だというストーリーをもっともらしく展開している。

周囲には何もない都市にも関わらず、ここロズウェルは驚くほど繁栄している。

立派な住宅や、ボディが光り輝く新車の作業トラックはエイリアンからの贈り物なのだろうか?それともロズウェルを本拠地とする石油採掘労働者や掘削業界に分配される収入のおかげか?どちらかが正解かは、読者の皆様の判断にお任せしよう。

 

博物館にはUFOの破片が展示されている。銅製のハニカム構造の破片は、人類の想像力を超えたテクノロジーの産物に見える。

UFOだけではないニューメキシコの魅力

ここから30分ほどの場所にはUFO同様、説明のつかないような素晴らしい自然がある。ボトムレス・レイクス州立公園内には、9つの淡水セノーテがある。

セノーテとは、数千年という長い時間をかけて石灰岩台地に自然に陥没してできた深い穴のような湖だ。深いものでは水深18から90フィート(約5.5~27メートル)あるが、公園名のごとく「底なし」ではない。公園名は、地元のカウボーイ​の投げ縄では長さが足りず測れなかったことに由来する。

   

9つの内、最も小さい湖は水面が藻で覆われて真っ黒いこと、そしてペコスダイヤモンド(石英の結晶で光り輝く石の壁)に囲まれていることからのデビルズ・インクウェル(悪魔のインク壺)と名付けられた。

ここから西の方角にある、ホワイトサンズを形成する石膏と同じ成分でできている。

水面からは見えないが、インク壺の中には魚が生息している。湖からほど近い場所には多くのキャンピング・サイトがあるが、ここは人口に対して「スペース」が有り余っているニューメキシコ州。

観光名所のボトムレス・レイクスでさえ、観光客がごった返す場所には程遠い。

   

アルバカーキへと戻る途中、突然霧が防雪柵を乗り越え、幅が広く真っ平な高速道路上に広がってきた。霧の中へと姿を消し、再び姿を現した時には、周囲100平方マイル(約160平方キロメートル)を見渡しても誰もいなかった。その数分後にちょっとした峠を超えたところで、ガソリンスタンドと併設された賑わいのあるレストランを発見した。注文を聞いてもらうためには、たくさんのレジが作動する音やトレーラートラックの大群に負けないだけの大声を出さなければならない。

 

ガソリンスタンドでの光景こそが、ニューメキシコ州の不思議かつ魅力的な個性、孤独と親密の混成を端的に表していた。

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