それは熟達した匠による手塗がもたらす、奥深い色味と高品位な塗装面を再現した、マツダ独自の塗装技術です。
MAZDA CX-80がまとう特別色、アーティザンレッドプレミアムメタリック(以下、アーティザンレッド)は、この匠塗による結実であり、同時に、現時点におけるマツダの塗装技術の粋を集めた、文字通りの特別な色なのです。
匠塗– TAKUMINURI –。
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それは熟達した匠による手塗がもたらす、奥深い色味と高品位な塗装面を再現した、マツダ独自の塗装技術です。
MAZDA CX-80がまとう特別色、アーティザンレッドプレミアムメタリック(以下、アーティザンレッド)は、この匠塗による結実であり、同時に、現時点におけるマツダの塗装技術の粋を集めた、文字通りの特別な色なのです。
優れた工芸品がそうであるように、アーティザンレッドで塗られたCX-80は見る角度、光の加減などによってさまざまな表情を見せ、日ごとに異なる美しさをドライバーに提供します。
こうしたアーティザンレッドの魅力を顕著に体感するには、どのような術があるでしょうか。
「一際、美しく感じる、おすすめの角度や条件はあります」と笑うのは、同色の生産技術開発を担った小原と、生産ラインで塗装工程を管理する安永です。ショールームに足を運ぶ前にぜひ知っていただきたい、「マツダの赤」の歴史的文脈、そして両名が語るアーティザンレッドを堪能するための鑑賞術と、同色が特別である理由を、どうぞご覧あれ。
マツダ初の乗用車であるR360クーペが産声を上げたのは1960年。同車がまとう「マロンルージュ」というカラーから「マツダの赤」が始まり、以来、マツダ車の歴史の随所で、印象的な赤いクルマが送り出されてきました。
コスモAP、ファミリア、ユーノスロードスター、アテンザ、CX-5など、皆様の記憶の中にも「マツダの赤いクルマ」が存在しているかもしれません。マツダにとって「赤」という色はブランドを象徴する色であり、だからこそ、こだわり続けてきた色なのです。
近年では、「カラーも造形の一部」という思想のもと、クルマを一層魅力的に彩る匠塗という塗装技術開発に注力するなど、カラー、そして赤へのこだわりは一層加速しています。
そして生み出された、CX-80がまとうアーティザンレッドは、マツダが追求し続けてきた赤というカラーの現在形です。歴史と技術の積み重ねが息づく、アーティザンレッドの見どころを、たっぷりとお伝えします。
小原 誠司(Seiji Obara/写真左)技術本部 車両技術部 アシスタントマネージャー 安永 怜(Ryo Yasunaga/写真右)防府工場 第4車両製造部 アシスタントマネージャー
カラーデザインを担当した岡本圭一はアーティザンレッドのイメージを「最高峰の職人技で生み出される熟成されたワインのような赤」と表現しています。このイメージをどのように具体的カラーに置き換えたのでしょうか?
小原:デザイナーの表現や感覚を具体化するには、まずはそのカラーを光学特性として、できるだけ数値へと置き換える必要があります。そしてその光学特性を持ったカラーをどのような材料や手法で実現するかを考えるのが、私が担った領域ですが、かなりの数の試作と時間を投じています。
アーティザンレッドの開発はかなりの難題でしたが、塗料開発など、カラー開発に関わるさまざまな領域のスペシャリストが集まって知恵を出し合う共創活動と、過去、匠塗で培った技術を集約することで、ようやく実現にこぎ着けました。
実車をご覧になれば、まさに「熟成されたワイン」のような、鮮やかな赤から、深く濃厚な赤への美しい変化が楽しんでいただけると思います。
安永:生産に着手する前にサンプルを見たときは、「素晴らしいカラーだけど、これ、本当に量産できるの?」と不安があったほどです(笑)。ですが、今挙がった共創という考え方に、生産ラインも背中を押されました。困難が予想されながらも、絶対にこのカラーを生産ラインから送り出してやろうと思えたのは、開発部門や生産技術部門と一体となって、アーティザンレッドというカラーに対する想いと価値を共有できたからです。
ソウルレッドクリスタルメタリックやマシーングレープレミアムメタリックといった、匠塗によるカラーはすべて3層の塗膜で構成されています。アーティザンレッドの場合はいかがでしょうか?
小原:同じく「反射・吸収層」「透過層」「クリア層」の3層で構成されていますが、各層に、過去の匠塗で培われた技術が投じられています。以下の図版をご覧ください。
小原:透過層にはソウルレッドクリスタルメタリックで開発した高彩度顔料を、反射・吸収層にはマシーングレープレミアムメタリックで開発した漆黒顔料の改良版を使用しました。また、反射・吸収層にはロジウムホワイトで開発した極小のアルミ片(フレーク)を平行に並べる技術も投じています。アーティザンレッドとは、いわばこれら匠塗という技術の現時点における集大成なのです。
安永:生産ラインにおける製造技術という観点でも、アーティザンレッドは過去の蓄積の集大成です。そもそも、匠塗における反射・吸収層と透過層で異なる塗料を組み合わせ、正確な発色を得るのは非常に困難です。加えて、アーティザンレッドでは塗装範囲の精密化にもチャレンジしており、不具合のない良品を精度高く生産することには、かなりのハードルがありました。
それでも、いまアーティザンレッドのCX-80をお客様にお届けできているのは、過去の匠塗の生産で直面した課題とそれを乗り越えてきた蓄積があるからだと思っています。
塗膜が3層に限られているということは、その分、使用される塗料も少ないということでしょうか?
小原:その通りです。そして、塗料を最小限に抑えることには、環境負荷の低減という大きなメリットがあります。匠塗、そしてアーティザンレッドはただ美しいだけでなく、環境配慮も追求されたカラーだと言えると思います。
また、余剰な塗料を生産する必要もないので、塗料メーカーさんの生産活動における環境負荷も低減にもつながります。マツダだけではなく、関連メーカーさんも含め、クルマのライフサイクル全体でCO₂排出量削減などの環境配慮に取り組むことを、私たちは「Well to Wheel」と呼んでいて、開発活動の中でも非常に重要視しているのです。
安永:塗装は自動車製造の中でもとくに環境負荷が高いプロセスです。ですから、開発だけでなく私たち生産の現場でも常に環境負荷を低減するアプローチを模索しています。
マツダ車全般の塗装に使われる「アクアテック塗装」はVOC(シンナーなどの揮発性有機化合物)排出量と、CO₂排出量低減を実現する技術ですね。
安永:アーティザンレッドの塗装プロセスでも、環境負荷低減につながるアイデアが生まれ、実践されています。塗装のプロセスでは、反射・吸収層と透過層を塗装した後に熱処理しますが、この際、温度を一気に上げるのが従来のやり方でした。アーティザンレッドのプロセスではここをアップデートし、熱を階段状に徐々に上げていくようにしたのですが、このやり方を採用することで無駄なく熱を使え、エネルギー効率を高めることができました。
アーティザンレッドの品質向上と環境負荷低減の両者を目的に模索した方法でしたが、今はすべてのカラーの塗装プロセスで採用しています。アーティザンレッドの品質追求が生み出した、素晴らしい副産物です。
裏ワザQuick Access
①太陽光の下で眺め、「鮮やかな赤」から「重厚な赤」への変化を楽しむ
②開発者おすすめの鑑賞ポイントはリアフェンダー。複雑な造形が織りなすグラデーションを楽しむ
③ドアを開け、ボディの外側と内側の塗り分けと、塗り分けが生み出す色の一体感を楽しむ
④ボディに白線を写り込ませ、塗装とボディ設計が織りなす美しい「面の連続」を楽しむ
かくして生まれたアーティザンレッドを、お客様はどうすれば一層堪能できるでしょうか?
小原:まずは、鮮やかな赤から、深く濃厚な赤へのグラデーションを楽しんでいただきたいですね。そのためには、ぜひ屋外に出て強い日差しの下で車体を眺めてみてください。日の光が差し込む部分は鮮烈な赤が、陰影部分は深みのある赤が楽しめると思います。
小原:もしも販売店に足を運ぶ日が曇りでも、どうかガッカリしないでください。アーティザンレッドは光の加減や見る角度によって、さまざまな表情を見せるカラーですから、曇天の日だったら、深い赤に染まるCX-80が楽しめるはずです。販売店に足を運ぶたびに、その日の天候によって異なる表情を見せる赤をぜひご覧いただきたいですね。
では、アーティザンレッドのCX-80のどこを眺めるのがおすすめですか?
安永:カラーの変化を顕著に楽しむには、ボディの面の角度変化が大きく、造形が複雑な部分を眺めるのがおすすめです。例えば、ボディのリアセクションです。とくに、ボディ後端のウインドー周辺に光が差し込むと、リアセクション全体に広がる美しいグラデーションが目に飛び込んできます。
小原:造形が複雑な部分という観点では、ボンネットの端からフロントフェイス部分も変化が大きく、アーティザンレッドの豊かな表情が楽しめるポイントです。ぜひ販売店に足を運んで、皆様のお気に入りのポイントや角度を見つけてほしいです。
他にアーティザンレッドを堪能する方法はありますか?
小原:では、ちょっとマニアックな部分をお伝えしましょう。ボディはボンネットやドアなど、つねに目に入る外板と、ボンネットやドアなどで通常は隠れている内板に分けられますが、実はそれぞれ異なるカラーで塗り分けられています。
外板と内板では光の加減が全く異なるので、それぞれを同じ色で塗ってしまうと、ドアやリアゲートを開けて全体を眺めたときに、同じ色のはずなのに、統一感のないちぐはぐな色合いになってしまうことがあります。
アーティザンレッドのCX-80の内板には、アーティザンレッドよりも落ち着いた色を塗っています。この2色が持つ意味合いは、ご覧いただくのが一番早いでしょう。
小原:日差しの中で眺めても内板が明るくなりすぎず、アーティザンレッドの深く上質な色合いを邪魔しません。ドアを開けた状態でも、車両全体の色合いに統一感や上質感が損なわれていないことが、お分かりいただけると思います。販売店を訪れた際は、ぜひ、ドアやリアゲートを開けて、一歩下がってボディ全体を眺め、アーティザンレッドに隠された意匠を楽しんでいただきたいですね。
安永:細かいですが、外板と内板の2色の塗り分けの境界部分も見どころです。先に「アーティザンレッドでは塗装範囲の精密化にもチャレンジしている」とお伝えしましたが、それはまさにこの塗り分けのためです。
安永:ご覧の通り、外板カラーが内板側への侵入を徹底して抑制しています。こうした塗り分けのためには、車体から極めて近い距離で塗料を吹き付けねばならず苦労させられましたが、匠塗らしい緻密な塗装技術を、皆様に楽しんでいただけるポイントだと思います。
いま安永さんが言ったように、匠塗の魅力は色合いだけでなく、塗装の品質にもあります。
こうした品質を楽しむにはどんな方法があるでしょうか?
小原:それならば、ボディにあえてなにかを映り込ませるといいでしょう。私たちが開発の現場で使っている品質検査手法ですが、ボディになにかを映り込ませ、その像の連続性を確認するのです。
小原:異なるパネルをまたがっていたとしても、歪みやズレなく像が結ばれますが、これは塗装ムラや塗料による凹凸を徹底的に排除した匠塗の品質の表れといえます。販売店ではぜひ縁石や路面の白線など、細長いものをボディに写り込ませ、像の美しい連なりから塗装の品質と精緻なボディ設計を楽しんでみてほしいです。
安永:私の仕事は、できあがったボディを受け取り、それを塗装することですが、塗装以前にボディが正確で美しく成形されていなければ、美しい面の連続は得られません。
小原:デザイン、設計、製造、そして塗装など、クルマづくりの全てのプロセスで徹底的に品質を追求したからこそ、美しい面の連続性が得られます。アーティザンレッドのボディに映る像の美しさには、塗装だけではないマツダのものづくりへのこだわりが凝縮されていると思っています。ぜひ、お客様ご自身の目でそのこだわりを体感していただきたいですね。
たくさんのお話を聞く中で、アーティザンレッドにはただの赤ではない、変化する美しさがあると感じました。
小原:私もそれがお客様に伝わったら嬉しいなと思います。アーティザンレッドの開発にあたって、改めて家で赤ワインを眺めると、液体が鮮やかな赤から深い赤へと変化していく美しさ、まさにアーティザンレッドで追求した美しさがあったのです。変化という美しさがある、と認識して目にすることで感じられる感動があるのだな、と改めて感じています。
ぜひお客様にも、変化する美しさがある、と頭の片隅に置きつつ、アーティザンレッドのCX-80を楽しんでいただきたいと思います。
安永:変化する美しさは、お客様の価値観の変化にも伴走すると思います。かつては鮮烈な赤が好みだったけれど、時間と共に深い赤に好みが変わる、ということもあるでしょう。見るごとに表情を変えるアーティザンレッドは、その時々のお客様の好みに応じた表情を見せる色なのだろうと思っています。
カラーだけでなく、あらゆる部分に意匠を凝らしたクルマなので、お客様が購入を判断される際はパワーが必要になると思います。そうしたお客様の期待に応えられるよう、私たちも全身全霊のパワーで、CX-80を送り出しています。ぜひ、車両に息づくマツダのこだわりを感じ、長くお乗りいただきたいと思います。
小原さん、安永さん、ありがとうございました。