2020年に創立100周年を迎えたマツダ。
過去の成功を祝うと共に、未来へ向かう道筋を見出すために、
次の100年に向かうマツダが現在進めているプロジェクトをまとめた。
Story by Gavin Green
マツダという企業は、起伏に富んだ歴史を歩んできた。
ロータリー・エンジンの実用化、ル・マンで勝利を収めた日本初の自動車メーカー、原爆、そして日本経済に打撃を与えたオイルショック。
歴史とは、明るい未来があってこそ意味を成す。次の100年に向かって、マツダはサステイナビリティとクルマに対する情熱の両立を目指す未来ビジョンを明らかにした。
そのビジョンとは個人の自由、魅力的なドライビング体験、モビリティと経済発展など、クルマがもたらす利点を生かし、さらにマルチソリューションというアプローチを採用することで、大気汚染に代表されるクルマの欠点を補うというものだ。
ビジョンの根幹にあるのは、クルマへの情熱とドライビング。これをサステイナビリティと組み合わせることで、クルマが地球環境に及ぼす影響を軽減し、LCA (ライフサイクルアセスメント) を通じて環境コストを抑える。マツダは、この未来ビジョンを「サステイナブル “Zoom-Zoom” 宣言 2030」として公表している。
マツダにとって、これはあくまでも100周年を祝う最初の一歩に過ぎない。同宣言を受けたテクノロジーや施策の一部は、既に一部の国や地域で実現されている。
次世代テクノロジーはまだ出揃っていないものの、マツダが描いた未来ビジョンは魅力的で興味深い。マツダが進めている主なプロジェクトは、以下の通りである。
電動化技術
EVは環境に優しいクルマというイメージがある。しかし、実際はバッテリーを充電する為に必要な電力は、環境負荷の大きい火力発電から得ている場合がある。
また、バッテリーの製造工程でもCO2が排出される。そのため、効率的な内燃機関を持ったクルマよりも多くのCO2を結果的に排出している場合があり、EVが世の中に増えると、世界のCO2排出量がより多くなることもありうる。
マツダは、クルマのライフサイクル全体でのCO2削減を目的としたライフサイクルアセスメント(LCA)の視点でCO2削減に取り組むべきであると信じている。
最良の解決策は、各地域のエネルギー事情、電力の発電構成など地域特性を踏まえ、内燃機関や電動化技術のパワーユニットの製造・展開を適材適所で行うことだと考える。マツダ初のピュアEV MX-30が第46回東京モーターショー2019でお披露目されたが、世界中の発電方法がよりクリーンになれば今後のEV市場はより活気づくだろう。
再生可能液体燃料
マツダが目指す、「2050年にWell-to-WheelでCO2を90%削減」の実現には、内燃機関の進化だけではなく、燃料自体の低CO2化が必須である。
広島大学と東京工業大学との共同研究プロジェクトでは、微細藻類バイオ燃料の課題解決の鍵を握る藻類高性能化研究に取り組んでいる。
微細藻類バイオ燃料は、トウモロコシベースのエタノールなど従来のバイオ燃料に対し、食料競合の問題がなく、短期間で細胞増殖するため単位面積当たりの高い燃料生産ポテンシャルを有している。
また、ガソリン/軽油が流通している既存社会インフラがそのまま使用可能である上に、自動車側も改造が不要な利点も有する。
マツダは環境負荷の少ないクルマ、技術を今後もお届けする。
ラージアーキテクチャー
マツダは、広々とした車内スペースと快適性に加え、マツダの独自価値をお届けできる、より大きい車両「ラージアーキテクチャ」の開発に取り組んでいる
安全技術
自動車産業は、予防安全(事故のリスク/被害の軽減)と衝突安全(事故発生時の傷害軽減)の両分野を大きく進歩させた。
これに対しマツダのアプローチは、このような業界の標準的視点に加え、基本安全(良好な運転環境と優れた操縦安定性による安全運転のサポート)の視点も重要だと考える。
Mazda Proactive Safetyという基本的考え方を示している。具体的には、マツダは、ドライビングポジション、ペダルレイアウト、視界視認性、ヒューマン・マシン・インターフェースなど基本安全性能の継続的進化と標準化を進めている。
それと共に、他社メーカーと同様、予防安全や衝突安全の視点では、マツダはすでに数多くの先進安全技術(i-ACTIVSENSE)を搭載しており、それらの標準化・高精度化を進めている。
SKYACTIV-X エンジン
- 画像は2019年5月時点のものです。
内燃機関は長年にわたり世界中のクルマの動力として扱われてきた歴史があり、現時点でマツダはCO2排出量を削減する最良の方法は、内燃機関の効率を大幅に改善することにあると考えている。
マツダの革新的なSKYACTIV-Xエンジンは、新しい燃焼技術であるSpark Controlled Compression Ignition(SPCCI)を採用した。ガソリンを燃料としながら、ディーゼルエンジンと同じように「圧縮着火」を実現する燃焼方式であるリーン燃焼は、より少ない燃料で同じトルクを発揮でき、余力のある質の高い走りを実現する。
また、このエンジンに、マツダの電動化技術(e-SKYACTIV)のひとつである「MAZDA M HYBRID」と呼ばれる、MAZDA3から採用しているマツダの新しい電動化技術が組み合わされる。効率を突き詰めて磨き上げたエンジン性能を最大限に活用し、効率的な電動化技術と組み合わせることで、燃費と走りの向上を妥協なく両立している。
人と環境に優しく、誰もが純粋に「走る歓び」を感じられる新しい夢のエンジン、ご体感あれ。
ライドシェア
クルマは人々の「移動」を支えている。しかし近年、中山間地域における公共交通機関の空白化などにより、免許を返納し自らの運転で移動が出来ない高齢者を中心に移動手段が不足しており、自立した生活や旅行などを楽しむことが困難になっている。
マツダではこのような社会問題に対して、地域コミュニティや地域のドライバーが住民の「移動」をサポートできるような新しいビジネスモデルの構築に取り組んでいる。
まずは、マツダの地元である広島県内の二つの地域で「支え合い交通サービス」の実証実験を開始した。
地域住民の皆様は、マツダが提供するクルマとコネクティビティ技術を活用して、通院など生活に必要な移動だけでなく、おしゃべりの為に友人宅を訪問するなど、地域がつながり暮らしを豊かにする移動も可能になる。マツダは新たなクルマ文化の創造に貢献することにより、クルマを通して「生きる歓び」もお届けしていきたいと考えている。
直列6気筒エンジン
現在開発中の直列6気筒エンジンは、今後のラージモデルに搭載される予定をしている。最新のリーンバーン技術により効率的な燃焼をもたらし、格別のドライブフィールを約束する。
Mazda Co-Pilot Concept(マツダ・コ・パイロット・コンセプト)
自動運転技術の波が近づいている。一部の自動車メーカーでは、ロボットが運転し人は単なる乗員になるという未来がくると予見する。しかし「走る歓び」を大切にするマツダでは、それとはやや異なるビジョンを持つ。
マツダは、自動運転技術がドライバーに置き換わるのではなくサポートする存在であるべきだと考えている。
多くの自動車メーカーは「機械中心」の自動化に向かっているが、マツダは「人間中心」の自動運転技術Mazda Co-Pilot Conceptに基づき開発を進めている。
ドライバーが正常な時は、ドライバーが能力を最大限に発揮することを助け、運転することで走る歓びをお届けする。その裏でクルマはドライバーの状態を常時検知し、クルマがいつでも運転可能な状態でスタンバイしており、万が一のミスや運転出来ないと判断した場合にはクルマがオーバーライドし、周囲を含め安全な状態を確保する。ドライバーと周囲の人にいつでも安全・安心をお届けできる。
運転できる楽しさと自由な移動を生涯にわたり支援し、お客様の生活や生きがいを守っていく。それが、Mazda Co-Pilot Conceptである。