自動車メーカーにとって、
サステナビリティ(持続可能性)の取り組みは、環境に対する努力の証明となる。
マツダが所有する最先端の試験施設では、クルマの性能を限界まで試す数々の試験が行われている。
これらの試験を通じて、マツダ車に長く乗っていただくことが狙いだ。
Words Mariko Kato / Images Irwin Wong
マツダの耐久性へのこだわり
マツダにとって、クルマの耐久性とは、文字通り「クルマが長く持ちこたえること」を意味する。全てのモデルに対し、徹底的な実車試験が行われ、耐久性が高められている。マツダの耐久性へのこだわりは、「地球や社会とクルマが豊かに共存している未来」というマツダが掲げるビジョンに根差している。2020年、広島本社に気候試験ラボが完成、マツダはさらなる耐久性を追求する。
担当者は氷点下にもなる試験ラボで作業を行う。
最先端のテクノロジーを採用したこのラボでは、最も厳しい気象条件で実車試験を行っているため、マツダのクルマは平均的な熱波や吹雪ではびくともしない。
「ここでは北米を数十年に一度襲う熱波や、カナダ、ロシア西部や北ヨーロッパで数十年に一度観測される寒波をシミュレーションしています」と、厳しい気温がクルマの内外装に与える影響を測定するエンジニアの上原(写真)は語る。
担当者は氷点下にもなる試験ラボで作業を行う。
最先端のテクノロジーを採用したこのラボでは、最も厳しい気象条件で実車試験を行っているため、マツダのクルマは平均的な熱波や吹雪ではびくともしない。
「ここでは北米を数十年に一度襲う熱波や、カナダ、ロシア西部や北ヨーロッパで数十年に一度観測される寒波をシミュレーションしています」と、厳しい気温がクルマの内外装に与える影響を測定するエンジニアの上原(写真)は語る。
走行中のクルマの熱流体に対する厳しい気温の影響を評価するために、エンジニアの山田は実車を限界まで試す数々の試験を行う。具体的な試験条件は企業秘密だが、ラボでは灼熱から氷点下までの屋外温度、湿度30~80%、最大風速250km/h、そして赤道直下の日差しが再現されている。
走行中のクルマの熱流体に対する厳しい気温の影響を評価するために、エンジニアの山田は実車を限界まで試す数々の試験を行う。具体的な試験条件は企業秘密だが、ラボでは灼熱から氷点下までの屋外温度、湿度30~80%、最大風速250km/h、そして赤道直下の日差しが再現されている。
試験が終わると、エンジニアはデータを詳細に検証し、将来のモデルに反映させるために改善していく。上原によると、耐熱試験で一部のパーツが縮んだことがあったそうだ。
「樹脂の結晶化により、密度が高くなってしまいました。このモデルをシミュレーションに組み込み、今では未然に防ぐことができるようになりました」。
エンジニアリングイノベーション
マツダは風洞を利用して、さまざまな気候試験や空力試験を実施している。風洞実験室では、最大風速250km/hの再現が可能。
風洞実験室で試験の準備をする山田。厳しい試験後、約400にも上るパーツを徹底的に検査して、試験によって生じた欠陥や不具合の有無を確認する。
テストエンジニアたちの創意工夫が自動車業界の基準になりつつある。環境問題への本格的な取組みを宣言したマツダが必要とするのは、斬新な発想による新たなソリューションだ。
風洞実験室で試験の準備をする山田。厳しい試験後、約400にも上るパーツを徹底的に検査して、試験によって生じた欠陥や不具合の有無を確認する。
テストエンジニアたちの創意工夫が自動車業界の基準になりつつある。環境問題への本格的な取組みを宣言したマツダが必要とするのは、斬新な発想による新たなソリューションだ。
空力抵抗を低減するために、実車のボディ下部はカバーで覆われているが、このカバーが熱を蓄え、他の部品に熱を伝えてしまう。山田のチームは、最先端の風洞でチェックした空気抵抗を悪化させることなく、熱流をボディから遠ざけることに成功した。マツダはこの技術革新に対して特許を取得している。
空力抵抗を低減するために、実車のボディ下部はカバーで覆われているが、このカバーが熱を蓄え、他の部品に熱を伝えてしまう。山田のチームは、最先端の風洞でチェックした空気抵抗を悪化させることなく、熱流をボディから遠ざけることに成功した。マツダはこの技術革新に対して特許を取得している。
過酷な試験がクルマに長く乗り続けることにつながる
車両腐食試験ラボでは、世界で認められた被水シミュレーション技術が採用されている。このテクノロジーにより、エンジニアはモデルを横断した発想が可能になる。その結果、試験過程が簡素化され、今後の新型車ラインナップにも対応できるようになる。
防錆性能エンジニアの丸山は「同一のエンジンをMAZDA3とCX-30に搭載した結果、車高が低いMAZDA3に乗せたエンジンには水が多く溜まっていました。そこでMAZDA3に合わせて戦略を修正し、CX-30に対してはさらなる精緻化を行いました」と語った。
マツダ本社と同じ広島県にある三次自動車試験場では、13の難解なコースで実車試験が行われている。ここでもエンジニアが経験に裏打ちされた専門技術を駆使して、走行後の実車に対し、欠陥や不要なノイズを徹底的に検査している。
三次自動車試験場にてCX-5の長距離走行試験を担当する車両耐久性試験エンジニアの山川は「エンジニアは皆、自動車の走行性能評価、データ測定と分析、問題の特定、関連部署へのフィードバックとアドバイスを行うことができます。自動車の耐久性を高めるには問題を発見し、すぐに対処することが必要ですので、複数のスキルがあることは非常に重要なんです」と話してくれた。
マツダ本社と同じ広島県にある三次自動車試験場では、13の難解なコースで実車試験が行われている。ここでもエンジニアが経験に裏打ちされた専門技術を駆使して、走行後の実車に対し、欠陥や不要なノイズを徹底的に検査している。
三次自動車試験場にてCX-5の長距離走行試験を担当する車両耐久性試験エンジニアの山川は「エンジニアは皆、自動車の走行性能評価、データ測定と分析、問題の特定、関連部署へのフィードバックとアドバイスを行うことができます。自動車の耐久性を高めるには問題を発見し、すぐに対処することが必要ですので、複数のスキルがあることは非常に重要なんです」と話してくれた。
エンジニアによる解析に加え、三次ではロボットが複数のテストコースで実車を走らせる試験も行われている。効率的に行うために、一晩中デコボコ道や冠水した未舗装の道を走らせる。
エンジニアによる解析に加え、三次ではロボットが複数のテストコースで実車を走らせる試験も行われている。効率的に行うために、一晩中デコボコ道や冠水した未舗装の道を走らせる。
それでも山川は、「お客様が運転して実際に感じる変化はロボットではなく、人間が評価するべきなんです」と断言する。人間中心のクルマづくりを開発思想として掲げるマツダの走りを体現しているのは、人の感覚である。
それでも山川は、「お客様が運転して実際に感じる変化はロボットではなく、人間が評価するべきなんです」と断言する。人間中心のクルマづくりを開発思想として掲げるマツダの走りを体現しているのは、人の感覚である。
過酷な実車試験過程の根底には、サステナブルなクルマづくりを目指すマツダの意志がある。山川は「耐久性が高まれば部品交換が減り、最終的には環境負荷が低減される」と語る。言うまでもなく、耐久性が高まれば愛車に長く乗り続けることができるのだ。