街の魅力は何から生まれるのか?
アートとデザインの街、六本木の歴史と現在から、「街の風景」について考える。

Story by Yasuko Kimura

ビルと路地。喧騒と静謐。重層的な表情を持つ六本木

六本木は、人生経験豊富な大人のような街だ。

六本木ヒルズや東京ミッドタウンのような、巨大でモダンなビルがそびえ立つかと思えば、一つ角を曲がればたちまち入り組んだ路地に迷い込む。

さまざまな国の言語が飛び交い、ボーダレスな食、ファッション、カルチャーが溢れかえる通りのすぐ内側に、日本情緒を感じさせる静謐な庭園が潜んでいる。

 

たとえば六本木ヒルズの毛利庭園然り、東京ミッドタウンのミッドタウン・ガーデン然り、ビルの谷間に回遊式庭園を残す檜町公園然り。

そうした重層的な表情が、六本木の街に成熟した奥行きと、ちょっとした「手ごわさ」のようなものを加えているように見えるのだ。

街の個性を育んできた歴史の積み重ね

重層的な表情の背景には、この街が歩んできた歴史がある。

江戸時代は、毛利家を始めとする大名の広大な武家屋敷が建ち並び、そこに庶民の住まいが入り組むように混在していたという六本木界隈。

武家屋敷跡の広大な土地が明治時代には財閥一族のお屋敷となり、その後軍の施設となった。

それが戦後には米軍の宿舎が置かれた時期もあったことから、現在へと続く国際色豊かな繁華街が形成されていったらしい。

さらにはそうした街の魅力に惹かれて文化人や芸術家が集うようになり、独自のカルチャーが築かれていった。

それは、大人は大人でも銀座や日本橋の落ち着きとは違うし、同じ繁華街でも渋谷や新宿の賑やかさとも違う。

 

そうした独自のカルチャーが、六本木が「アートの街」「デザインの街」という新たな表情を持つことにもつながっていったのだろう。

目に入るものすべてのデザインが街の表情を作る

今、六本木ヒルズや東京ミッドタウンを歩けば、いたるところにパブリック・アートが展示されていて、何気ない散策の間にも常にインスピレーションを与えてくれる。

 

また、30年ぶりの国立美術館として誕生した国立新美術館をはじめ、六本木ヒルズの高層階に位置する森美術館、東京ミッドタウン内のサントリー美術館、ミッドタウン・ガーデンの一画を占める21_21 DESIGN SIGHTというように、個性豊かな美術館が集中しているのも「アートの街」たる所以だ。

特筆すべきは、これらの美術館はその多くが著名な建築家の手によるもので、それ自体が美しいデザインを持っているということ。

たとえば緑の中にガラスウォールの曲面がうねる国立新美術館や、高木をバックに芝生の庭に埋もれるように広がる屋根が印象的な21_21 DESIGN SIGHTは、アートやデザインの殿堂であると同時に、それ自体がアート、デザインとして街の表情を作っている。


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