経済成長の一方で、それを維持するためにベトナムが抱える課題
翌日、ホーチミンを出発して、北にあるダナンへと向かう。
海沿いの都市、ダナンはベトナムの繁栄拡大のシンボルだ。美しい海、色鮮やかな食べ物、そして好景気が揃ったダナンは巨額な投資を獲得しており、観光業が盛んだ。
ダナンへとCX-5を走らせながらふと「ベトナムは30年かけて大きな発展を遂げたが、国としてはまだ幾つか課題を抱えている。」というチュン・グエン博士の言葉を思い出した。世界銀行が発行した「ベトナム2035」レポートには、ベトナムが現在の繁栄や右肩上がりの経済成長を維持するために超えるべきハードルが記されている。
まず課題として挙げられるのが人口構成だ。
現在の人口動態を見る限り、労働年齢の人口が多く、これらの人口が経済成長を下支えしている。しかし15歳以下の人口が減少しており、現在の労働人口の高齢化に伴って労働人口が減る可能性がある。地理的にも1,120マイル(約1,816キロ)という長い海岸線があるため、気候変動が大きな問題となっている。しかし米エネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)によると、ベトナムは「2030年までに、総発電電力量の10.7%を再生可能な資源から発電することを目指している」そうだ。
ダナンに到着すると、海岸沿いを20分走ったところにある有名なハイバン峠に直行したくなった。
道は山間の急コーナー、突然目の前に現れる直線、そして息をのむような景色の連続だ。東南の方角には、空と南シナ海の間にダナンの高層ビルが立ち並ぶ様が見える。
昔、この峠はダナンの北にあるフエに行くための主要道路だったが、国の経済発展に伴う交通量の増加により、2005年には新たな主要道路としてハイバン・トンネルが建設された。
- 総距離12.5マイル(約20キロ)のハイバン峠は現在、ドライビング好きの遊び場と化し、種々雑多な乗り物を運転する人たちがドライブと景色を楽しんでいる。
ベトナムでロードトリップを楽しむなら、ハイバン峠は外せない。
ベトナムの北部と南部を結ぶこの山間の道はこの国の歴史の一部であり、ワクワクするドライブが楽しめる。南シナ海から渦をまくように昇る霧が、非日常のドライビング体験を演出する。
ダナンはベトナムの経済成長そのものを表している
峠の頂上近くには、複数のコンクリートの掩蔽壕の下に小さな店が肩を並べている。掩蔽壕はフランス軍が建設したとされているが、ベトナム戦争中は米軍によって使われた。銃弾の穴だらけの掩蔽壕は、かつての激しい戦闘を静かに物語っている。
ダナンに戻る途中、美しい景色の中でCX-5を思い切り走らせ、その優れた動力性能を堪能した。
ダナンは、過去30年に渡るこの国の見事な復興の縮図だ。
2019年、ダナン市はアジア・オセアニア地域24か国のICT業界団体で組織されるASOCIO(アジア・オセアニアコンピュータ産業機構)が主催する「ASOCIOサミット」で「ASOCIOスマートシティサミット2019年賞」を受賞。これは、各都市の幸福指数、スマートインフラ、経済成長、教育、研究開発を総合的に評価する賞だ。
観光も好調で、建設業もその恩恵を受けており、海岸沿いには5つ星ホテルが立ち並んでいる。
- ダナンはせわしない都市だが、縦横無尽に走るクルマやスクーターに遭遇しない場所もたくさんある。
ベトナムの復興は素晴らしい偉業だが、現在の繁栄を継続できるかどうか注視していきたい。
ダナン市街地の南東に位置し、5つの大理石と石灰岩の丘から成るマーブル・マウンテンを訪れると、ベトナムという国が伝統と未来を上手く融合する様に驚嘆した。
黄昏時のハン川には、様々な色のネオンを纏った遊覧船が水路を走り、けばけばしいまでにライトアップされた橋の下を通っている。竜の形をした遊覧船からは、炎が吐き出されている。
ここダナンは、我々がベトナムの至るところで遭遇したポジティブで友好的な雰囲気に満ち溢れている。土曜日の夜を楽しむ人々を眺めながら、ベトナムが辿ってきた道のりや直面する課題が脳裏をよぎった。
ベトナムの復興は素晴らしい偉業だが、現在の繁栄を維持できるかどうかは別問題だ。政府もさらなる政策をもって成果を強固なものとし、継続的な発展を推進しなければならない。
今後、この国がどのような道のりを辿るのか楽しみだ。過去30年の変遷を見る限り、ベトナムの未来はきっと明るいのだろう。
MAZDA CX-5、ベトナムを走る
MAZDA CX-5 2020年モデルは、ベトナムでは欠かせないパートナーとなった。
通勤のクルマやスクーターがほぼ無秩序に走り回るホーチミン市を難なく走り抜け、東南アジアで最も有名なドライビング・ロード、ハイバン峠では走る歓びを存分に味わわせてくれた。
2020年モデルに新たに搭載されたパドルシフトと8.8インチのセンターディスプレイにより、ベトナムでのドライブがさらに上質で楽しいものとなった。