スペインの隣に位置する小さな国、ポルトガル。今回はマツダ CX-5 に乗り、
ポルトガルのエストラーダ・ナシオナル 2(国道2号線)を走った。
北はスペインとの国境から10キロ程離れたシャベシュから最南端のファロまで、
739キロに渡ったポルトガル縦断の旅をレポートする。

Story by Briggs/ Photography by Ben Roberts

世界の様々な場所を探検したいと願う冒険好きなドライバーなら、世界で最も有名なロードトリップのルートを数多く知っているだろう。

その中でも、ポルトガルの国道2号線、エストラーダ・ナシオナル 2は特別な存在だ。ヨーロッパの「ルート66」と呼ばれる全長739キロのこの道路は、ポルトガル国内で最長である。

4つの山脈、11の川、29の自治体を通る国道は、70年という長い歴史を持つ。1945年に北部のシャベシュと最南端のファロを結ぶ道路として建設されたエストラーダ・ナシオナル 2は、ポルトガル縦断道として多くのドライバーに利用されてきた。

多様な景色、美味しいワインと食事、ドライブの途中にある有名な観光地、そして人気(ひとけ)の少ない道路でのドライブを心待ちにしながらCX-5をピックアップして、いよいよ旅のスタートだ。

0KM: シャベシュから出発!

ポルトガル縦断ドライブのスタート地点は、石畳の道が魅力的なシャベシュ。スペインとの国境から南へ10キロほど離れた都市だ。温泉が湧くシャベシュの歴史は、ローマ時代にまで遡る。

市内には、2世紀にラテン語が彫られた石橋、ポンテ・トラジャーノが変わらぬ姿で佇んでいる。

 

走っているうちに、2号線とその先にある未知の世界への入り口を示す標識を発見。これからが本当の旅の始まりだ。

シャベシュから離れると、早速巨大なアロエベラ、羊飼いと羊の群れや背の高いオリーブの木々が目に飛び込んできた。

このドライブのために厳選したプレイリストを再生して、いよいよ冒険へと繰り出した。

90KM: ワインの産地、ドゥロ渓谷

ドゥロ渓谷を抜けるワインディングは、ドライバーの根性が試される道だ。怖がりな人、乗り物酔いする人は避けたほうが無難だろう。

ワインディングの両側にはテラコッタ色の村、太陽の光を燦燦(さんさん)と浴びた丘陵の斜面やブドウ園が見渡す限り広がっている。

道沿いの濃い緑がピンクの薔薇、柑橘系の花を鈴なりにつけた木々を色鮮やかに引き立てている。思わず道を間違えてしまい、エストラーダ・ナシオナル 2から離れて丘陵の斜面に沿って走る道に入ってしまった。

しかしこれが幸いし、見晴らしの良い場所からこの地域全体を眺めることができた。

世界屈指のドライビング・ロード、N222

本線を逸れたことで素晴らしい景色を楽しめたことに気をよくした我々はエストラーダ・ナシオナル 2を離れ、東に向かって N222(国道222号線)沿いを走ることにした。

N222はペーゾ・デ・レーグアからピニョンへと続く27キロの道路で、2015年には自動車レンタル会社、Avis(エイビス)によって「世界最高の道」に選ばれた。

N222はドゥロ渓谷の中心地を横切り、ドゥロ川の南岸へと続く。途中、多くの地元のワインやポートワイン生産者の施設を目にした。N222のドライブでは心臓に悪いコーナーの数々を走破し、世界遺産にふさわしい見事な景観を楽しんだ。

118KM: 絵になる町、ピニョン

N222を走るうちに、ドゥロ川沿いの小さな町、ピニョンに到着した。季節は春、道沿いにはプラタナスの木々や白い囲い柵が並んでいる。

丘陵の間に位置するピニョン駅は、伝統的なブドウの収穫の様子を描いたアズレージョ (手塗のタイル) で美しく装飾されている。

ここでは時間がゆったりと流れ、港に停泊している伝統的なラベロ・ボート (ポルトガルの伝統的な木造貨物船) を見渡すバルコニーでは、人々がのんびりと朝刊を読んでいた。

 

ポルトガルの伝統的な手塗のタイル、アズレージョに描かれたブドウの収穫の様子は、丘陵の中で一際目を引いた。

198KM: ヨーロッパで最も古い都市の1つ、ポルト

ピニョンからN222を西に走り、ポルトに到着した。

ここポルトはヨーロッパで最も古い都市の1つで、地元の人々と観光客が入り混じった、賑やかな街だ。

リベイラ地区の道幅の狭い路地を歩いて川岸へと向かい、川面に映る夕日の上を走る船の往来を眺めた。

その晩、伝統的な料理のバカラオ (鱈の塩漬けの干物を使った料理) と肉がふんだんに入ったリゾットを堪能した後、ポルトガル人の慣習に則って有名なポルト酒を味わった。

 

ポルトを流れる川に映る夕日の上を、ボートが往来する。ポルトはヨーロッパで最も古い都市の1つで、ポルトガルの歴史を語る街だ。

402KM: 伝統的なヴィンヤード、アルベルゲ・ド・ボンジャルディム

今回の旅で最も楽しみなことの1つは、世界屈指のヴィンヤード(ブドウ畑)を訪れること。人気の少ない道を走り、ネスペラルという小さな村にあるアルベルゲ・ド・ボンジャルディムへと向かった。

1756年に創設されたこのヴィンヤードは、数々の賞を受賞した有機の赤ワインや白ワイン、ロゼを生産している。フルボディの赤ワイン、ボンジャルディム・レゼルバは10年から20年かけてじっくりと熟成されるのである。

454KM: メインルートを逸れて辿り着いたモインオ・ダ・ファダゴサ

ドライブに出かけるのなら、メインルートを離れて一晩を過ごしたい。

そう思い、シックなゲストハウスに改造された古い風車、モインオ・ダ・ファダゴサへとCX-5を走らせた。

静かな田園地方にあるゲストハウスに到着すると、イギリス人オーナーのサイモンとフィオナが中を案内してくれた。居心地の良い室内を眺めながら、風車で使われている水は近くの川から引いていると聞いた。

サイモンとフィオナは最近廃墟を購入し、自宅に改造するそうだ。風車の帆には粘土で作られた小さなつぼが取り付けられ、風を受けた時に音を発する。この伝統的な手法により、風車の持ち主は天候の変化を察知できたのだという。


次ページは100万エーカーを超える広大なコルクの森を経由したゴールまでの道のりについて

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