マツダ株式会社 第1塗装課第1塗装係の廣瀬健后と石原浩二に取材し、
マツダ独自の環境に優しい塗装技術の秘密を探った。

従来の塗装工程では、その過程で大量のCO2やVOC(揮発性有機化合物)が排出されるが、マツダはどのような取組みを通じて環境負荷を低減させてきたのか。

廣瀬:
従来の溶液塗装からマツダ独自のスリー・ウェット・オン塗装、アクアテック塗装へと進化させてきました。2002年から採用しているスリー・ウェット・オン塗装は3層の塗装をそれぞれ乾燥させないままウェットな状態で塗り重ね、一回りの焼付け乾燥で仕上げることで、従来の塗装方法に比べエネルギーの使用量やCO2排出量が削減できる、環境にやさしい塗装となりました。さらには2009年に導入したアクアテック塗装は、塗料が改良されたことで中塗後の乾燥が不要になり、さらに環境にやさしく、揮発性有機化合物(VOC)を大幅に削減した塗装技術です。シンナーの含有量が少ない水性塗料のため、油性塗料よりも塗装工程で発生するVOCの量が少なく、重ねていく個別塗装の機能が向上するという利点があります。

アクアテック塗装技術について

スリー・ウェット・オン塗装よりもさらに環境にやさしい水性塗料を用いたアクアテック塗装システムは塗装工程の集約と行程の短縮を通じて、VOC(揮発性有機化合物)とCO2排出量の削減を同時に達成。2015年には、第6回ものづくり日本大賞の「製造・生産プロセス」部門の内閣総理大臣賞を受賞した。

マツダ独自の塗装カラーや技術は、どのように実現したのか。

マツダ独自のオリジナルで鮮やかな色を創り出すために、粒子の細かい鮮やかなアルミやメタル、マイカなどが使われる。各素材のサイズはボディカラーの仕上がりやクルマ全体のデザインに影響を及ぼすため、大きさや並び方を顕微鏡で観察するなど様々な検証が行われる。マツダを代表するレッドは、広島の文化に根差した色で、広島東洋カープのチームカラーにも採用されている。

広島東洋カープは1973年、赤をチームカラーに採用

マツダ車の塗装工程

廣瀬:
まずボディパーツの内側を手塗りして、外側のパネルをロボットで塗装します。この作業は、1台当たり約17分で完了します。ロボットには、マツダの職人の『匠塗 TAKUMINURI』技術がプログラミングされていますので、モデルによって異なる形状に対応しながら、幅やスピードを変えながら作業します。

マツダ CX-5は、マツダの代名詞となったソウルレッドクリスタルメタリックが初めて採用されたモデル。

マツダの塗装技術の将来的な展望

廣瀬:
昨今のカーボンニュートラルの流れから塗膜がより薄くなる一方で、デザイナーが描くクルマのデザイン性を最大限に発揮させていくためにさらに色彩豊かで陰影のある色を表現していく事になると考えています。その中では、これまで扱った事も無い新材料にも手を拡げていく事になるのではないでしょうか。いずれにしても、高い技術と技能、そしてそれらを支える人づくりを通じてマツダの独自性溢れる塗装を今後も追求していきたいと考えています。

個人的に好きなボディカラーは?

廣瀬:
ソウルレッドクリスタルメタリックが一番好きですね。今のマツダらしさを表す「鮮烈な赤」を印象付けた色という意味でも印象深いのですが、私としては、色を通じてカープや広島との繋がりを強く感じさせてくれる色で非常に気に入っています。

石原:
私も廣瀬さんと同じで、好きな色はソウルレッドクリスタルメタリックです。この色は塗装条件が少しでも変化するとデザイナーが求める色が表現できなくなるため設備の管理が非常に重要になります。苦労が多かっただけに思い入れがあり好きです。

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