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朝靄(あさもや)に包まれる造船の町を走り抜け、旅のご来光を拝む

明治期から日本の造船の中心として栄える広島・呉。海岸線に沿って林立する大型クレーンは朝靄に包まれ、この非日常の景色に早くも旅の虫が疼きだした。早朝に呉を出発した今回の旅は、呉から「安芸灘とびしま海道」「瀬戸内しまなみ海道」へと島々を繋いでいき、尾道に至る、全長100kmの海道ドライブだ。

最初にMAZDA CX-8で向かったのは、呉の瀬戸内に浮かぶ倉橋島。この旅のご来光と行程を一望できる高台、島内の火山(ひやま)展望台だ。山頂の大岩に腰を据えると、瀬戸内の島々が一望できる360度の大パノラマが開ける。霞がかった島々の稜線と、まだ眠っている漁村の集落が冷たい空気に包まれ、これから始まる旅路との対照的な静けさが、よりいっそう旅への期待感を膨らませた。

   

この高台は、瀬戸内海を航海する船の灯台として、山頂で火を灯していたことから「火山(ひやま)」と呼ばれている。山頂のすぐ下にある駐車場まで上がれば、徒歩20分ほどで山頂だ。早朝の散歩にしてはややハードな道のりだが、その対価に値する景観と朝日が旅のはじまりを告げた。

倉橋島の名産「お宝フリット」

朝日の余韻に浸りながら山を下り、朝の空腹を満たすために立ち寄ったのは、倉橋島を代表する白砂のビーチ、桂浜の目の前にあるレストラン&バー「café slow」だ。

   

一番の人気メニューは「〜倉橋お宝フリット〜SLOWフィッシュバーガー」。「お宝フリット」とは、倉橋島の新しい名物料理として考案され、近隣店舗で振る舞われているメニューだ。値段が付きづらいサメなどの未利用の魚をちりめん入りの衣で揚げて有効活用すること、瀬戸内産レモンのタルタルソースを使用することが決められており、各店舗でさまざまなスタイルで提供されている。倉橋島近海で獲れたサメなどの白身に、さっぱりとしたレモンタルタルが好相性で、「café slow」ではバーガースタイルで豪快に味わえた。

一番の人気メニューは「〜倉橋お宝フリット〜SLOWフィッシュバーガー」。「お宝フリット」とは、倉橋島の新しい名物料理として考案され、近隣店舗で振る舞われているメニューだ。値段が付きづらいサメなどの未利用の魚をちりめん入りの衣で揚げて有効活用すること、瀬戸内産レモンのタルタルソースを使用することが決められており、各店舗でさまざまなスタイルで提供されている。倉橋島近海で獲れたサメなどの白身に、さっぱりとしたレモンタルタルが好相性で、「café slow」ではバーガースタイルで豪快に味わえた。

御手洗地区で風待ち、潮待ち

倉橋島を後にすると、いよいよ「安芸灘とびしま海道」にCX-8を走らせる。本州から最初の橋、安芸灘大橋を渡って下蒲刈島(しもかまがりじま)、さらに蒲刈大橋を走り上蒲刈島(かみかまがりじま)、豊島大橋から豊島と、島から島へ、橋から橋へと、ドライブを飽きさせない海道ドライブが続く。

倉橋島を後にすると、いよいよ「安芸灘とびしま海道」にCX-8を走らせる。本州から最初の橋、安芸灘大橋を渡って下蒲刈島(しもかまがりじま)、さらに蒲刈大橋を走り上蒲刈島(かみかまがりじま)、豊島大橋から豊島と、島から島へ、橋から橋へと、ドライブを飽きさせない海道ドライブが続く。

   

呉から4つ目の島、大崎下島にやってきた。この島の目的地は、重要伝統的建造物群保存地区の御手洗地区と、今夜の宿泊先に選んだ「閑月庵 新豊(かんげつあん しんとよ)」だ。

呉から4つ目の島、大崎下島にやってきた。この島の目的地は、重要伝統的建造物群保存地区の御手洗地区と、今夜の宿泊先に選んだ「閑月庵 新豊(かんげつあん しんとよ)」だ。

   

宿へのチェックインを前に、御手洗地区を案内してくれたのは、「閑月庵 新豊」のオーナー・井上明さん。「閑月庵 新豊」は御手洗地区の海岸線に面した中心部にある、1日1組限定の宿。築150年の江戸時代末期の建築で、昭和初期まで旅館として営まれた「新豊」を引き継ぐ形で、井上さんが2018年2月にオープンした。

「御手洗地区は『街』なんです。近隣の島や周辺の地域が漁村の『村』なら、御手洗は昔から『街』だったんですよ。地域の人は雅楽をやり、江戸時代には御手洗米相場まであったんです。上の世代の人たちは子供の頃、『家の外に出るときはちゃんとした服装で出なさい』と言われていたそうです」

御手洗地区は、江戸時代から明治時代にかけて北海道から往来した北前船の寄港地として栄えた町。鞆の浦を境に6時間おきに変わる潮目を待つ「潮待ち」「風待ち」の停泊地として、さまざまな商い、文化、娯楽が形成された。多くの人、物が集まり、参勤交代では名だたる藩の大名たちが訪れていた。幕末には、維新の政治を彩った志士たちが集まる密会場所としても利用されていたといわれている。

   

「当時と比べるとずいぶんと静かになってしまいましたが、御手洗の良さはそこにあります。静かでありながら、人が営んできた形跡がそこかしこにあります。寺社の立派な石垣も、当時の面影を残す街並みも、静寂に包まれた今の御手洗に平然と佇み、その調和がとても心地いいんですよ」

「当時と比べるとずいぶんと静かになってしまいましたが、御手洗の良さはそこにあります。静かでありながら、人が営んできた形跡がそこかしこにあります。寺社の立派な石垣も、当時の面影を残す街並みも、静寂に包まれた今の御手洗に平然と佇み、その調和がとても心地いいんですよ」

   

なかでも御手洗の「朝」は、独特な時間が流れるそうだ。「閑月庵 新豊」の2階の客室からは瀬戸内の海が一望でき、「御手洗の朝」を満喫できるとのこと。

なかでも御手洗の「朝」は、独特な時間が流れるそうだ。「閑月庵 新豊」の2階の客室からは瀬戸内の海が一望でき、「御手洗の朝」を満喫できるとのこと。

   

翌朝に思いを馳せながらチェックインを済ませ、夕食までの時間、再度CX-8に乗り込み夕日のドライブへと車を走らせた。ソウルレッドのボディに、ブラックメタリック塗装されたホイール、フロントグリル、ドアミラーが瀬戸内の夕焼けを背負うと、またひとつこの旅のハイライトをつくってくれた。

   

宿に戻ると、軒先で井上さんとシェフの篠崎さんが出迎えてくれた。井上さん同様、篠崎さんのこだわりも人一倍強い。提供される海の幸は、すべてとびしま海道各島の漁師か呉近郊で獲れたものを使用し、コース料理のひと皿ひと皿に必ず「島」が添えられる。

宿に戻ると、軒先で井上さんとシェフの篠崎さんが出迎えてくれた。井上さん同様、篠崎さんのこだわりも人一倍強い。提供される海の幸は、すべてとびしま海道各島の漁師か呉近郊で獲れたものを使用し、コース料理のひと皿ひと皿に必ず「島」が添えられる。

   

「瀬戸内の海は、見た目は穏やかでも実は潮の流れがすごく速いです。だから魚の身が締まっていて、ここの刺身を食べるとみなさん驚かれますね。また、メバルなど本来刺身として食べる機会に出会えない魚種も刺身としてお出ししています。こうした、御手洗ならではの食を、1組のお客様だけのために集めて、最高のものを提供しようと心がけています」

「瀬戸内の海は、見た目は穏やかでも実は潮の流れがすごく速いです。だから魚の身が締まっていて、ここの刺身を食べるとみなさん驚かれますね。また、メバルなど本来刺身として食べる機会に出会えない魚種も刺身としてお出ししています。こうした、御手洗ならではの食を、1組のお客様だけのために集めて、最高のものを提供しようと心がけています」

   

篠崎シェフのこだわりの極めつけは、地物の食材を活かすためにサイフォン式の抽出器で提供される出汁スープだ。調味料はいっさい使用せず、自家製のドライ野菜をはじめ、鯛の焼きアラ、昆布などを抽出器にかけ、これが前菜として食事の最初に供された。さらに、この出汁スープはそのあとに提供される揚げ物の餡としても使われる。

ほかにも島唯一の豆腐店から仕入れた豆腐を使った一品や、締めのご飯ものとして出される肉厚にこだわった安芸灘産の穴子飯など、徹底的に地元産にこだわり、地元ならではの“美味しい話”は尽きることがない。ゲストとの会話を楽しみながら、わくわく感を生み出す演出。どこまでもお客思いのもてなしだ。

「閑月庵 新豊」の2階の客室で迎えた朝は、井上さんの言う通り、静けさに包まれていた。静まり返った瀬戸内の水平線にゆっくりと太陽が昇り、水面を照らす朝日のラインが御手洗に向かってまっすぐに伸びる。遠くの方から聞こえる小さな漁船のエンジン音が島の間で反響し、鳥のさえずりとわずかな生活音がかすかに心地よく耳に届いてきた。

   


次ページは旅の最終地点「神勝寺 禅と庭のミュージアム」までの道のりについて

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