日本の伝統芸術、生け花。
マツダのデザイナー、宇多川が生け花から受けた影響に迫った。
Words Steve Beimel / Images Irwin Wong
マツダのデザイン本部でカラーとトリムを担当するデザイナーの宇多川。彼女が今日、時間を共にするのは華道家の平間 磨理夫。神戸の高台に佇む日本家屋の端正な角部屋で、宇多川と平間は生け花を通じて、空間という概念を模索した。
軒先から畳、障子、日本庭園を望む床から天井までの窓に柔らかな光が差し込む。マツダでクルマの室内空間をデザインする宇多川と生きた花を扱うアーティストの平間。この2人には色、ライン、質感、形、光と影、そして引き算のデザインという共通言語がある。
「植物に心を託すことは、日本の芸術文化の中心として
はぐくまれた贅沢な行為であると考えます」
平間 磨理夫
日本独自の哲学にとらわれない二人の会話は、あらゆる文化の人たちから理解されるだろう。日本独自の哲学のように聞こえるが、平間の生け花は開放的で普遍的な雰囲気が感じられる。そうありながらも、二人ともそれぞれの専門領域で日本固有の感覚や精神を体現している。
「以前、平間さんが主宰するワークショップに参加したことがあるんです」と宇多川。
「ちょうど、クルマのインテリアに関するプロジェクトのテーマで頭が一杯だった時でした」。
平間にとって、生け花とは刻一刻と変わる空間に命を吹き込むものとして表現されている。花、花器、敷板、背景、余白、そして光が調和して、空間全体を満たしていくのだ。
宇多川は「平間さんの空間に対するアプローチをお聞きして、素材の調和を通じて空間にバランスをもたらすことに対する理解が深まりました」と語る。
「例えば、クルマのインテリアに木を取り入れることで、揺らぎのある自然光によって不均一な表情を見せ、空間を心地よくします。これは生け花にも共通することだと思います」。
宇多川は「平間さんの空間に対するアプローチをお聞きして、素材の調和を通じて空間にバランスをもたらすことに対する理解が深まりました」と語る。
「例えば、クルマのインテリアに木を取り入れることで、揺らぎのある自然光によって不均一な表情を見せ、空間を心地よくします。これは生け花にも共通することだと思います」。
生け花とは、花に命を与えること
平間と宇多川、それぞれ精通している分野は異なるが、デザインに対する豊かな感性が二人を結び付ける。平間は生け花の師匠に6年師事した後、フリーとなって独自のスタイルを確立した。宇多川は大学でプロダクトデザインを専攻、マツダに入社してからはカラーデザインに専念している。二人にとってトレーニングとは、デザイン上の様々な問題を試行錯誤して解決し続けることを意味する。
平間はフリーになった後、質感、色、空間を模索しながら生きた植物、木材、陶器を使った作品を創造している。マツダでの宇多川の仕事も質感、色、空間に関わるインテリアデザインで、レザー、ファブリック、内装の装飾のコーディネーションを担当している。宇多川は「マツダに入社して以来、日本の伝統的なクラフトマンシップの特徴であるきめ細かさや、丁寧さ、細部までのこだわりを理解することができるようになりました」と語った。