生け花について
西洋の伝統的なフラワーアレンジメントは、色とりどりの多くの花を装飾として飾るという意味合いが強い。対して日本の生け花は、必要最小限の芸術表現という説明がしっくりくる。「間」と呼ばれる生け花周辺の空間、生け花に落ちる光とそれによって作られる影に対しても、花や植物と同じくらい注意が払われる。生けられる植物のフォルム、ラインや形が入念に考慮されるという点では、彫刻に近いかもしれない。
生け花の起源は6世紀に遡り、仏壇に花を供える行為に由来する。16世紀には茶道に欠かせない重要な要素、さらには大名の権威や富の象徴として城に飾られるようになり、生け花は新たな方向へと向かい始めた。
現在、日本には2000ほどの生け花教室が存在する。多くの生徒にとって、生け花は美的感覚、そしてデザインに対する感覚を養う生涯学習となっている。
生け花の起源は6世紀に遡り、仏壇に花を供える行為に由来する。16世紀には茶道に欠かせない重要な要素、さらには大名の権威や富の象徴として城に飾られるようになり、生け花は新たな方向へと向かい始めた。
現在、日本には2000ほどの生け花教室が存在する。多くの生徒にとって、生け花は美的感覚、そしてデザインに対する感覚を養う生涯学習となっている。
以前参加した平間のワークショップについて、宇多川は「平間さんが生け花を飾る空間を入念に準備する姿勢、そしてそれぞれの花を意識しながら、繊細に扱う姿に魅了されました。このような精神をマツダでの仕事に活かしたいという意欲を再確認することができました」と語った。
今回、神戸にて平間は宇多川が語った姿を何度も目の前で披露してくれた。生け花の準備として、部屋を空っぽにし、徹底的に掃除する。その後、年季の入った敷板を部屋に持ち込み、完璧な配置のために注意深く空間を計測する。計測が終わると、畳まれた黒い布の上に、自らの生け花道具を整然と並べる。配置エリアを再び掃除しながら、平間は「生け花の空間を入念に準備すれば、植物を生ける行為がとても簡単になり、楽しくなるんです」と話した。
「その瞬間にだけ存在する素晴らしさ、美しさを体験していただけたらと思います」
デザイナー 宇多川
平間の作品に着想を得た素材を選び、平間と相談する宇多川
準備が整うと、平間は宇多川を呼んで花器の選択に取りかかる。
「生け花では、花器は花がその輝きを放つためのステージとなります。花器自体にも、豊かな表現がなければいけません」。
二人は大きな黒い器を選び、敷板の端に近いところに配置する。花は数本にしたほうがよいという平間のアドバイスを受け、二人は花1本1本を集中して選んでいく。
平間の作品の特徴を一言で言えば、「シンプルさは力強さ」ではないだろうか。黒い器に緑の葉が茂る枝を生けた後、宇多川は不要と感じられる葉や枝を取り除いていく。余計なものが取り除かれるにつれ、器の中の水の表面が表れてきた。
6本の白い花を吟味していた平間は、1本の花を選び、器に生ける。
「時間をかけて、丁寧にバランスを調整します。光の向きも大切です。生け花を観る人が、空間の目に見える要素、見えない要素の両方を想像していただけるように」。
平間の作品の特徴を一言で言えば、「シンプルさは力強さ」ではないだろうか。黒い器に緑の葉が茂る枝を生けた後、宇多川は不要と感じられる葉や枝を取り除いていく。余計なものが取り除かれるにつれ、器の中の水の表面が表れてきた。
6本の白い花を吟味していた平間は、1本の花を選び、器に生ける。
「時間をかけて、丁寧にバランスを調整します。光の向きも大切です。生け花を観る人が、空間の目に見える要素、見えない要素の両方を想像していただけるように」。
植物と同等に大切な「花器」と「間」
「花そのものを超越して空間を埋めるものが存在し、それを感じたり、想像したり、匂いを嗅ぐことができるのです。雰囲気というか、ある種の存在感だと思っています」と平間は語る。
葉の位置の微妙な調整を繰り返した後、平間は宇多川に霧吹きを手渡す。宇多川は作品の後ろから、立った姿勢で生けられた花と植物に霧を吹きかけ、二人の共創による生け花が完成した。
この日、生け花を行う前に、宇多川はクルマのインテリアを通じて表現される日本の美について、「おいしい1杯のお茶を淹れるような、温かみのある快適な日常生活の一部」と語ってくれた。その一部には、優しい光が差し込む部屋に生けられた、水滴をしたためた生け花も含まれるのだろう。
「生け花を生けるとは、過去や未来が存在しない、その瞬間を生きること。
瞬間的に強いインスピレーションを受け、それを解き放つこと」
デザイナー 宇多川